事業用定期借地権のメリット・デメリット、存続期間や中途解約などの注意点
事業用定期借地権として土地を貸し出したいとのご相談がありました。
事業用定期借地権は、事業用建物所有と利用を目的とする定期借地権のことで、存続期間が2通りあります。
また、公正証書による契約が必要なことも事業用定期借地権の特徴です。
そこで今日は、「事業用定期借地権のメリット・デメリット、存続期間や中途解約などの注意点」について書いてみたいと思います。
どのような土地が事業用定期借地権に向いているかを説明していきます。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
事業用定期借地権とは
まず、事業用定期借地権について説明します。
事業用定期借地権は、借地借家法の第23条に定められている定期借地権のことで、そのほかにも、一般定期借地権や建物譲渡特約付借地権があります。
借地権 | 存続期間 | 利用目的 | 契約方法 | 借地権の 終了 | 契約終了時の建物 | |
定期 借地権 | 一般 定期借地権 | 50年以上 | 用途制限なし | 公正証書等の書面で行う 1.契約の更新をしない 2.存続期間の延長をしない 3.建物の買取請求をしない という3つの特約を定める | 期間満了 による | 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する |
事業用 定期借地権 | 10年以上 50年未満 | 事業用建物 所有に限る 居住用は不可 | 公正証書による設定契約をする。 1.契約の更新をしない 2.存続期間の延長をしない 3.建物の買取請求をしない という3つの特約を定める | 期間満了 による | 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する | |
建物譲渡 特約付 借地権 | 30年以上 | 用途制限なし | 30年以上経過した時点で建物を相当の対価で地主に譲渡することを特約する。 口頭でも可 | 建物譲渡 による | 1.建物は地主が買取る 2.建物は収去せず土地を返還する 3.借地人または借家人は継続して借家として住まうことができる | |
普通借地権 | 30年以上 | 用途制限なし | 制約なし 口頭でも可 | 1.法定更新される 2.更新を拒否するには正当事由が必要 | 1.建物買取請求権がある 2.買取請求権が行使されれば建物はそのままで土地を明け渡す。借家関係は継続される |
◆事業用定期借地権は、他の借地権と異なり、用途が事業用に限定されます。
つまり、借地に建てられる建物の対象は、主に店舗や工場、ホテルなどになり、アパートやマンションは対象外になります。
◆存続期間は2通りがあります。
もともと事業用定期借地権の契約期間(存続期間)は10年以上20年以下でしたが、2008年1月1日の借地借家法改正以降、10年以上50年未満に変更となっています。
なお、期間が「10年以上30年未満」か「30年以上50年未満」かによって特約の扱いが異なりますので注意が必要です。
◆そして、事業用定期借地権の場合「公正証書による契約が必要」です。
公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。
※一般定期借地権では公正証書以外の契約書でも可能です。
事業用定期借地権の3つの特徴
事業用定期借地権の存続期間を10以上30年未満で設定した場合、
1.契約の更新(存続期間の更新)を伴わない
契約の期間満了とともに借地関係が終了し、土地が貸主の元に返還されます。借地人が契約の更新を希望していたとしても、自動更新はされません。
2. 契約終了時に建物買取請求権が発生しない
契約が終了した際に、建物買取請求権が発生しません。
建物買取請求権とは、契約終了時に借地人が貸主に対して建物の買取を請求する権利のことです。
3.建物再築を理由とした存続期間の延長はできない
契約期間が満了時までに借地人は、自分の費用で土地を更地にし、貸主に返還する必要があります。
契約期間中に壊れた建物を再度建てていたとしても存続期間は延長されません。
などの契約内容になります。
◆存続期間30年以上50年未満の場合は、上記3つの内容は規定されませんが、特約を設けることで存続期間を10以上30年未満と同様の扱いは可能です。
事業用定期借地権の3つのメリット
貸主にとっての事業用定期借地権の3つのメリットは
1. 低リスクかつ安定した収益を期待できます
アパートやマンションなどの投資用物件の場合、建築費用に加えて、その後の維持費も発生しますが、事業用定期借地権は、貸主は建物を建てる必要がありません。
初期費用をかけずに定期的に地代を得ることができるので、低リスクで安定した収益が期待できる、というメリットがあります。
2. 土地の評価減で相続税軽減につながります
事業用定期借地権は残存期間に応じて相続税の評価額が減少することがメリットです。
評価額は、以下の数式で算出できます。
自用地としての価額-自用地としての価額×定期借地権等の残存期間に応じた割合
なお、定期借地権等の残存期間に応じた割合は以下の通りです。
◆5年以下・・・・・・・5%
◆5年超10年以下・・・・10%
◆10年超15年以下・・・・15%
◆15年超・・・・・・・・20%
※国税庁「No.4613 貸宅地の評価」
3. 借主が撤退する可能性が低い
事業用定期借地権の場合、借地人(借主)が多額の資金を投入して建物を建設することになるので、投資金額を回収が必要があります。
そのため、安易に撤退することがないので長期的に地代を得ることが期待できるというメリットがあります。
事業用定期借地権の3つのデメリット
メリットがあればデメリットも存在します。
貸主にとっての事業用定期借地権の3つのデメリットは
1.借主が破綻した場合に困ることになる
借地人(借主)が撤退しにくいというメリットの裏側には、万が一借主が破綻してしまった場合に貸主が困る点がデメリットがあります。
契約期間中に借地人が破綻すると、建設された借主名義の建物がそのまま残ることになり、勝手に売却や取り壊しができず、法的手続きが必要となるのです。
2.貸主側から中途解約ができない
借地人の利益を守るため、貸主側から中途解約ができないというデメリットがあります。
つまり、自分の土地であっても一度貸してしまうと契約期間満了までは自由に使用できないのです。
ただし、特約を設けていれば借地人側から中途解約を申し込むことができます。もちろん、借主に契約義務違反があれば解除は可能です。
3.固定資産税に関する特例は適用されない
住宅用地の場合、一定の範囲の面積であれば固定資産税が評価額の6分の1、都市計画税が3分の1に減額されますが、事業用定期借地の場合は、その特例が適用されないことがデメリットになります。
今まで住宅が建っていて特例が適用されていたとしても、住宅を取り壊して事業用定期借地にした段階で適用されなくなることに注意してください。
最後に一言!
事業用定期借地権は用途が事業用に限定された定期借地権のことです。
ただし、事業用定期借地権で貸し出すためには、
商業地や通行量の多い地域にあり、客を呼びやすい、一定の面積があり大型商業施設も建てやすいなど、その土地が事業用に適している必要があります。
また、10年以上50年未満の存続期間での契約になりますので、長期間使用する予定がない土地であることが必要になるでしょう。
事業用敵借地権で貸し出すと、借主が撤退する可能性が低いので、低リスクで安定した利益が長期的に見込めるなどのメリットはありますが、デメリットも存在します。
他の借地権と比較しながら活用法として何が最適なのかは良く考えてから決めるようにしてください。
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