「停止条件」と「解除条件」の違い!解除条件の2つのパターン「解除条件型」と「解除留保型」
不動産の売買では、残念ながら思い通りに契約が進まないこともあります。
例えば、住宅ローンの審査が通らない、買換えで自宅が期限までに売れない、必要な行政庁の許可が下りない、といった理由で契約が白紙になってしまうことがあります。
このような将来発生するだろう不確定な事由を条件にして売買契約を締結することがあります。
それが「停止条件」と「解除条件」です。
どちらも、不動産の売買では、頻繁に行っている条件付契約なのですが、この二つには大きな違いがあり、「解除条件付契約」には解除の方法の違いから2つのパターンがあります。
それが「解除条件型」と「解除留保型」です。
そこで今日は、「停止条件と解除条件の違い!解除条件の2つのパターン解除条件型と解除留保型」について書いてみたいと思います。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
条件付契約の法的効力の発生と消滅
不動産に限らず、売買契約では一定の条件を定めたものがあり、契約の法的効力が発生、或いは、消滅するかによって2種類に分類されます。
それが「停止条件付契約」と「解除条件付契約」です。
「停止条件付契約」は、
その条件が成就したときに契約の法的効力が「発生」する契約のことです。
法的効力を「発生」させるのに「停止」という言葉が使われているのは、売買契約締結時から、その条件が成就するまでの間は、その契約の法的効力の発生が「停止」しているからです。
ただし、当事者間の特約によっては、法的効力の発生を契約締結時に遡るなど、その時期を遡及することもできます。
次に「解除条件付契約」は、
その条件が成就してしまったきに契約の法的効力が「消滅」する契約のことです。
つまり「停止条件」と「解除条件」は、全く異なる性格の条件になりますので、売買契約を締結するときに契約解除の条件が付く場合は、どちらの条件なのか明確にしなければなりません。
なぜなら、当事者間や仲介業者との間でトラブルが発生したときに、いつの段階で、契約の法的効力が発生したかなどが大きな意味を持つからです。
営業マンも停止条件付契約を誤認している
「停止条件付契約」は、
条件が成就したときに、法的効力が発生し、条件が成就しなければ、そもそも契約はなかったものになります。
つまり、その契約自体が存在しなかったことになるのです。
にもかかわらず、
「停止条件が成就しなければ、売主および買主は本契約を解除することができます」といった特約条項を記載している不動産業者がいますが、
これは間違いです。
なぜ間違いかお分かりになりますか?
答えは、
もともと効力が発生していない、つまり、存在していない契約を解除することはできないからです。
特約条項の例を挙げて説明します
まず不正解の特約条項です/
「本契約は●月●日までに売主の転勤が確定することを停止条件とします。万一、売主の転勤が確定しなければ本契約は白紙解除とします。」
次に正解の特約条項です/
「本契約は●月●日までに売主の転勤が確定することを停止条件とします。」
これだけで、いいのです
なぜ間違うかというと「停止条件付」を、契約の効力を停止させている条件が付いた契約だと誤認しているからです。
言い換えると、
もともと契約として効力はあるけれど、その効力を停止さる条件が付いている、
あるいは、
もともと契約として効力はあるけれど条件が成就すると契約が停止する、つまり「不成立になる」と勘違いしているのです
そうではなくて、その条件が成就するまでは、契約の効力が発生していない、つまり停止しているから、停止条件なのです。
少しややこしいですけど、ここは重要ですので覚えておいてください。
繰返しますが・・・・
停止条件付契約は契約の効力を停止させる条件が付いた契約ではなくて、条件が成就するまでは、契約の効力が停止している契約のことです。
つまり、条件が成就することで、はじめて契約の効力が発生するということです。
解除条件付売買契約の2つのパターン
先ほども説明しましたが、解除条件付売買契約は、その条件が成就してしまったときに契約の法的効力が「消滅」する契約のことですが、
その契約には、「解除条件型」と「解除留保型」の2つのパターンがあります。
「解除条件型」では
解除条件が発生すると、その契約は自動的に解除になります。
一方「解除留保型」は
解除条件が発生したときに、その契約を解除するか、続行するかを選べる契約のことです。
契約解除の例を挙げて説明します
融資審査の結果、住宅ローンが借入できなくなった場合、契約が白紙解除となる「融資利用の特約」を付けた契約で
融資審査が否認されたことで、契約が自動的に解除になるのが「解除条件型」の契約です。
一方、融資審査が否認されたことで、解除を申し出て契約を解除するか、自己資金を充当して契約を進めるか、解除と続行を選択できるのが「解除留保型」の契約です。
ただし、解除留保型の場合で契約を解除する場合は、定めた期限までに解除の意思を申し出ないと解除できません。
解除期限を過ぎてしまうと解除ができなくなり、契約を続行しなければならなくなります。
続行することで残代金の支払が不可能な場合などは、白紙解除ではなくて違約解除になることもありますので解除期限は必ず守ってください。
条件付売買契約締結時の仲介手数料の支払い
この項目は重要です。
なぜなら、契約解除時の仲介手数料の支払について、よくトラブルになるからです。
宅建業者が依頼者から受け取ることができる仲介手数料は、成功報酬ですので、売買契約が成立したときにその請求権が発生します。
しかし、「停止条件」が付いている場合、売買契約を締結しても条件が成就するまでは契約の法的効力は発生していません。
つまり、契約としてはまだ成立していないのです。
そのため、停止条件が付されている契約の場合、宅建業者は契約締結時に仲介手数料の請求はできませんし、誤認したまま請求したとしても、依頼者は仲介手数料を支払う必要はないということです。
にもかかわらず、契約締結時に仲介手数料を請求する不動産業者がいますので、注意してください。
したがって、停止条件が成就せず契約が成立しなくても、当然に仲介手数料は支払う必要はないのです。
解除条件付の場合は、売買契約締結時に法的効力は発生していますので宅建業者は依頼者に対して仲介手数料を請求することができます。
ただし、解除条件付でも契約が解除になる場合は、ほとんどが白紙解除になりますので、売買契約時に仲介手数料を支払っていたとしても、全額返還されますので、覚えておいてください。
なぜなら、白紙解除は契約時点に戻ってその契約が無かったことになるからです。
停止条件付売買契約の具体例をご紹介します
ま一つ目が<建築条件付土地の売買契約>です。
建築条件付土地とは、買主が、売主または売主が指定する施行会社との間で一定期間内に、土地上に建築する建物の工事請負契約を締結することを条件として売買される土地のことです。
建築条件付土地の売買契約では、工事請負契約が成立した場合に土地売買契約の効力が発生する「停止条件付」契約とすることが多いです。
ただし、工事請負契約が成立しなかった場合に土地売買契約の効力が消滅する「解除条件付」契約を採用している業者もいますので、どちらの条件になっているのかは必ず確認するようにしてください。
二つ目が<借地権付土地・建物の売買契約>です。
「借地権」とは、土地を借りる権利のことです。
借地権付土地・建物の売買契約では、今の借主から次の借主に借地権が譲渡されることになり、その場合、譲渡することを地主(所有者)が承諾することを停止条件としています。
三つ目は<農地転用許可条件付農地の売買契約>です。
農地の転用や権利移動を目的とする売買では、農地法に基づく許可や農業委員会への届出が必要になります。
許可取得や届出が受理されるよりも前に売買契約を締結する場合は、許可が出ること、あるいは届出の受理を停止条件とします。
解除条件付売買契約の具体例をご紹介します
先ほどの説明と重複しますが復習もかねて、もう一度説明します。
一つ目が<融資利用の特約付売買契約>です。
融資利用の特約付売買契約は、金融機関から融資(住宅ローン)の承認が得られなかった場合には、買主は売買契約を解除できるというものです。
融資利用の特約には、融資が不承諾になったら自動的に契約が解除になる「解除条件型」と、買主の意思により解除の申出を行う「解除留保型」があります。
「解除留保型」では、買主は解除することも、融資分や減額分を自己資金で補って契約を続行することもできます。
二つ目が<買換え特約付売買契約>です。
マイホームの買換えで、新居の購入費用に今の家の売却代金を充当する場合、今の家が売却できなければ、新居の購入もできなくなります。
そのため、マイホームの買換えでは、期限までに今の家の売却ができなかった場合には、買換え先の契約を解除できる、という特約を付けることになります。
買換え特約では、期限までに自宅が売却できなければ、買換え先の契約が自動的に解除になる「解除条件型」と、買主の意思により解除の申し出を行う「解除留保型」があります。
「解除留保型」契約では、買主(つまり自宅の売主)は契約を解除することも、自宅の売却益を自己資金で補って契約を続行することもできるのです。
まとめとして一言
将来発生するだろう不確定な事由を条件にする契約には、
一定の条件が成就することによって契約の効力が発生する「停止条件付」と、一定の条件が成就してしまったことによって契約効力が消滅する「解除条件付」の二つのパターンがあります。
この違いから条件の定め方が重要になります。
停止条件付契約と解除条件付契約は、原則として当事者間で自由に取り決めることができます。
ただし、その条件が不法行為に該当するものや、社会通念上で不可能な事由を条件とするもの、そして、当事者の意思だけで条件が成就したかどうかを決定するものなどは無効になります。
また、条件の内容や書き方によっては、停止条件に該当するのか解除条件に該当するのかが容易に判断できない場合もあります。
消費者の立場でこのような契約に臨むときには、
それが「停止条件」なのか「解除条件」なのか、「解除条件」ならば解除する場合に自動的に解除になる「解除条件型」のか、意思表示が必要な「解除留保型」のか、について、あらかじめ、不動産業者からしっかりと説明を受け明確にするようにしてください。
なぜなら、契約トラブルが発生したとき、契約効力の発生時期など、条件の法的意味合いの違いが重要となる場合があるからです。
不動産業者でも、停止条件と解除条件を混同し誤って解釈していて、停止条件付にもかかわらず契約締結時に仲介手数料を請求する不動産業者がいるくらいですので注意が必要なのです。
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