私道の通行・掘削に関するトラブルの可能性を説明しなかった宅建業者に説明義務違反
今日ご紹介するのは、
前面道路(私道/位置指定道路)の通行・掘削に関しては、売主の前所有者と隣地所有者の間の別件訴訟の判決によって通行権・掘削権が認められていました。
しかし、隣地所有者から通行・掘削の妨害がなされる可能性があると読み取れる従前の経緯が記載されていた判決書の写しがあったのです。
それにもかかわらず、通行・掘削が隣地所有者から妨害される可能性を買主に説明することを怠った売主(宅建業者)と媒介(仲介)業者に対し説明義務違反が認められた紛争事例です。
紛争事例の内容
(1)買主X(個人、非宅建業者)は、平成26年3月21日、売主(宅建業者)Aから、媒介(仲介)業者Bの仲介で、土地(以下「本件土地」という)を、売買代金4,980万円で購入しました(以下「本件売買契約」という)
本件土地の前面道路は位置指定道路(私道)です。
(2)本件土地は、もとMが所有していましたが、平成26年2月20日、Aに売却しました。
Kは、本件土地の隣地所有者で、前面道路の所有権を有しています。Mが本件土地の所有 者であった当時、Mに前面道路の通行と掘削の権利かあるかどうかが争いとなって訴えが起こされ(以下「別件訴訟」という)、MがKに対して通行権と掘削権を有するとの判決が出されています。
なお、別件訴訟の判決文は、Kが判決に従わない可能性や、本件土地において建築工事を行おうとしたときにはKの妨害行為によって影響を受けることを読み取ることができる内容となっていました。
(3)本件売買契約の前に、Xは、Bに、「私道はトラブルが多いけれどもこの土地は大丈夫ですか」と質問し、これに対して、Bは、「裁判の結果Mが全面的に勝訴しているため、通行の権利に関する問題はクリアになっている」と答えていた。
また、本件売買契約の重要事項説明書には、「判決により無償の通行権と掘削権を取得しております」と記載されており、Bがこの記載を読み上げてXに説明していました。
しかし、AとBとの間では、判決書を提示するとXが購入を控える可能性があるため、Xには判決書を見せないことが合意されており、売買契約締結前にはXは判決書を見せられていませんでした。
(4)Xは、本件土地を購入した後、建設会社に依頼して自宅の建築工事を開始したが、Kによって工事にクレームをつけられたり、駐車が妨げられるなどの妨害行為があったことから自宅の建築工事を断念し、平成27年4月26日、本件土地を、売買代金4,020万円で、C社に売却しました。
(5)Xは、AとBに対し、売買契約締結前に隣地所有者から通行・掘削の妨害される可能性があったことについての説明する義務があったのに説明を受けていなかったとして、購入価格と売却代金の差額や請負工事中止に伴う違約金などの損害を被ったとして、損害賠償を請求しました。
各当事者の言い分(意見陳述)
<買主Xの言い分>
AとBは、土地を購入しようとするXに対し、購入するか否かの意思決定に影響を及ぼす重要な情報を説明する義務を負っていたのに、Kが前面道路の使用を妨害する可能性があるという重要な情報を説明しなかったのであって、説明義務違反によって損害賠償義務を負う。
<売主Aの言い分>
売主が宅建業者に媒介(仲介)を委託する場合、契約当事者の意思としては、重要事項の説明は自らか依頼した宅建業者が行うものとして、その説明に委ねている。
つまり、売主本人は買主に対して説明義務を負わない。
<媒介(仲介)業者Bの言い分>
宅建業法第35条には、取引対象となる隣地所有者の氏名や人柄、性格などは掲げられておらず、判決書の交付義務もない。
BがXに判決書を交付しなかったのは、Xから交付を要求されなかったからである。
また、通行権・掘削権は判決によって明確に認められていて疑問の余地がなく、この点はXに説明をしている。
本紛争事例の問題点
本紛争事例の問題点は、
(1)売主(宅建業者)の説明義務
(2)媒介(仲介)業者の説明義務
本紛争事例の結末
(1)売主(宅建業者)Aについて
売主は買主から説明を求められ、かつ、その事項が購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ほすことが予想される場合には、信義則上その事項について、仲介業者を介するなどしてこれを説明する義務を負います。
判決の確定により法的には本件土地の承継人であるXの通行権や掘削権が確保されているとしても、Kが別件訴訟の判決に従わない可能性があることも否定できない。
その場合には、さらなる訴訟等の法的手段を講じたり、講ぜられたりするなどして、さらに時間や費用を要し、Xにおいて自宅建築工事に大きな影響を受ける可能性は否定できない。
そのため、Aにおいては、判決書を交付するなどしてKの言動について説明をするべきであったのであって、AにはXに対して説明義務違反による責任がある。
(2)媒介(仲介)業者Bについて
宅建業者には、宅建業法第35条第1項所定の事項に限らず、購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項を認識している場合には、その事項についても説明義務を負います。
Kとのトラブルの可能性はXが本件 地を購入するにあたって契約締結の可否の判断に影響を及ぼし、また、重大な不利益をもたらすおそれのある事項である。
そのため、BにはXに対して説明義務違反による責任がある。
本紛争事例に学ぶこと
本紛争事例からは、
不動産を買おうとする者の不利益を隠して売買を成立させれば、必ずトラブルが生じるのです。
売主(宅建業者)Aと媒介(仲介)業者Bは、判決書を提示すればXが購入を断念すると考え、判決書を見せずに売買契約を締結しましたが、購入後に隣地所有者との間に生じるかもしれない状況に少しで想像できておれば、このような対応が不適切であることは容易に分かったはずです。
また、Xは、売買契約の前に前面道路が私道であることに不安を感じ、Bに対して前面道路の通行と掘削などトラブルについて質問をしています。
しかし、Bは、これに対して誠意のある回答をしていません。
宅建業者は、買主にとって不利益となるおそれのある事項について説明義務を負いますが、買主が関心や不安をもっている事項については、特に丁寧に説明をすることが求められるのです。
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