買主の浸水懸念に対し不十分な調査のまま浸水被害無しと誤った報告をした宅建業者に損害賠償責任が認められた紛争事例
今日ご紹介するのは、
買主が購入を検討中の不動産に対し浸水懸念を持ち、宅建業者に調査を依頼するも、不十分な調査のまま「浸水履歴はない」と誤った報告を行った売主(宅建業者)と媒介(仲介)業者に損害賠償責任が認められた紛争事例です。
紛争事例の内容
(1)買主Xは、一戸建て中古住宅(以下「本件不動産」という)の内見で、地下1階の駐車場と地下玄関との間に高さ約90cmの仕切り板が設置されていたことから、地下駐車場の浸水を懸念し、媒介(仲介)業者Bに、駐車場内の過去の排水状況の調査を依頼しました。
(2)Bは、市役所で浸水履歴の問い合わせを行い、本件不動産の所在街区に浸水履歴があるとの回答を得ましたが、本件不動産の浸水履歴については個人情報に該当するとの理由から回答を得られなかった。
また、本件不動産の売主(宅建業者)Aにも確認を行い、「前所有者からは、平成17年の大雨の際にも浸水はなかったと説明を受けている」との回答を得た。
Bは、地下駐車場の排水ポンプの動作確認を行い、正常に作動することは確認していた。
(3)上記(2)の調査から、BはXに以下の通り回答した
・「平成17年の集中豪雨の際には駐車場内に雨水の浸水はなかった
・ポンプの動作確認をしたが問題なく正常に動いた
・仕切り板の設置は、浸水被害はない状況だったが、記録的豪雨のあった平成17年以降に、浸水した場合に建物内部への浸水を防ぐために前所有者が設けたもの
(4)平成25年12月、XはBの媒介(仲介)により、Aと売買代金1億700万円とする本件不動産の売買契約を締結しました。
このときAは、本件不動産の浸水被害について、今まで浸水被害に遭っていないと説明し、A作成の物件状況確認書(告知書)にも、周辺環境に関する浸水等の被害の有無について「知らない」と記載していました。
(5)平成26年1月、XはAより本件不動産の引渡しを受けたが、同年7月及び9月に、地下駐車場に雨水が流入する浸水事故が発生したため、Xは、自動車の修理を行うとともに、自動作動型の止水板を設置しました。
(6)その後、Xが市役所に本件不動産の浸水履歴に関する個人情報開示請求を行ったところ、平成17年9月に地下駐車場にて浸水事故が発生していたことが判明したのです。
(7)Xは、A・Bに浸水被害に関する説明義務違反があったとして、自動作動型止水板設置費用、止水版維持管理が必要になったことによる本件不動産の評価損、自動車修理費用、慰謝料等、 合計1,663万円余の損害賠償を求める訴訟を提起しました。
各当事者の言い分(意見陳述)
<買主Xの言い分>
A・Bは、地下駐車場と地下玄関との間に仕切り板が設置されるなど浸水が懸念される事情があったのに、過去の浸水履歴を含め可能な調査を行う義務を怠り、Xに本件地下駐車場の浸水について説明をしなかった。
また、A・Bは、Xから浸水の心配について調査を求められたのだから、調査を尽くすべきだったのにこれを怠り、浸水の事実を否定して事実に反する説明を行った。
<媒介(仲介)業者Bの言い分>
Bは、市役所に本件不動産の浸水履歴の確認調査を行い、本件不動産を含む街区内で浸水履歴がある旨の回答を得たが、本件不動産の浸水履歴は個人情報を理由にの回答は得られなかった。
また、売主Aにも事実確認を行い、「前所有者から本件不動産が浸水被害に遭ったことは一度もないとの回答を受けている」との説明を受けている。
さらに、Bは、地下駐車場の排水ポンプの動作確認を行い正常に作動することまでも確認しています。
以上のとおり、Bは、Xの浸水懸念について、過去の浸水履歴を含めて可能な調査を行った上で、地下駐車場に浸水したことはなく、排水状況も間題ない旨を正確に説明しています。
<売主(宅建業者)Aの言い分>
Xに対する説明については、Bの主張を援用します。
Aは、媒介(仲介)業者であるBをして、本件不動産の浸水被害に関する調査、及びXへの説明義務を尽くしています。
本紛争事例の問題点
本紛争事例の問題点は、
(1)買主依頼の調査は行ったが、結果として事実と誤なる報告をした媒介(仲介)業者Bの説明義務違反
(2)買主が浸水懸念をしていることを知る売主(宅建業者)Aの調査説明責任
本紛争事例の結末
控訴審判決は、
原審同様、 A・Bの説明義務違反を認め、Xの請求を一部認容しました。
(1)過去の浸水事故発生は、不動産の売買一般において必ず説明しなければならないということはできないとしても、Xが浸水事故発生の危険性を懸念していたことを、A・Bは認識していたのであるから、A・Bには本件不動産の浸水履歴について正確な情報を入手し、Xに説明すべき義務があったと認められる。
(2)Bは、Aの前所有者が浸水事故はなかったと述べているとの説明をそのまま信じ、委任を受け情報開示制度を利用して浸水履歴を入手することなく、浸水事故はなかったと誤った説明をしたのであるから、調査説明義務違反があったと認められる。
(3)Aは、Bから連絡を受けXの懸念を認識したのであるから、宅建業者であることを踏まえれば、前所有者からの説明をそのまま伝えるのみでなく、情報開示制度を利用するなどして正確な情報を入手し、Xに説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったもので、調査説明義務違反があったと認められる。
(4)A・Bの説明義務違反と相当因果関係が認められるXの損害として、簡易な止水版設置費用/212万円余、自動車修理費用/3万円余、弁護士費用/21万円、合計/237万円余を認める。
本紛争事例に学ぶこと
(1)宅建業者の水害履歴の調査義務
令和2年8月28日施行の宅建業法施行規則改正により、市町村が水防法の規定に基づく水害ハザードマップを提供している場合は、重要事項説明において、当該マップを提示し取引不動産の概ねの位置を示すことが義務付けられています。
当該義務は「浸水実績図」についての説明までを求めるものではないとされていますが、次の場合においては、上記ハザードマップの提供に加え、浸水履歴等についても調査を行い、判明した事項について正確に説明する必要があるのです。
①買主が、取引不動産において浸水事故発生の危険性があることについて懸念し、浸水履歴の調査依頼を宅建業者に行った場合
②宅建業者が通常の調査において、取引不動産において浸水事故発生の懸念があることを知った、或いは、通常知り得る場合
(2)他の宅建業者や売主の報告を利用する場合の留意点
買王への説明に、他の宅建業者や売主に確認した内容を利用する場合は、その内容が誤っている場合かあることから、鵜呑みにすることなく、宅建業者においてその内容が正確であるかの確認を行い、買主に対しては
①宅建業者が確認した内容について、推測を交えず正確に報告する
②確認ができない内容については、宅建業者において内容の確認ができていない旨を付した上で報告をする
などの基本スタンスを守ることが重要になります。
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