隣地との共有共用の排水管等の存在をわざと告知しなかった売主の瑕疵担保責任免責を排除した紛争事例
今日ご紹介するは、
売主の瑕疵担保責任を負わない旨の特約を付した土地建物の売買契約において、隣人と共有共用の浄化槽と排水管が地中に埋設されていることを知っていて、そのことを買主に告げなかった売主の瑕疵担保責任を認めた紛争事例です。
買主に損害を与えるかもしれない事項を知ってて告げないければ、例え、瑕疵担保責任(改正民法では「契約不適合責任」)を免責にする特約を付していても、その責任を負わなければならない、ということです。
紛争事例の内容
(1)買主(宅建業者)Xは、売主A所有の土地建物を、媒介(仲介)業者Bの仲介により、建売住宅を建築し販売する目的で買い受け代金を支払い引渡しを受けました。
その際に、XとAは、本件不動産を現状有姿のまま売買すること、及び売主の暇疵担保責任を免責する特約を付すことに合意していまた。
(2)その後、Xは、顧客Kとの間で、本件土地を建売住宅として売買(転売)する旨の契約を締結しました。
(3)後日の調査で、本件土地には中央部を横切る形で、隣地所有者でありAの親戚であるMとの共有共用の排水管が埋設され、かっ隣地にまたがる形で共有共用の浄化槽が埋まっていることが判明したのです。
そして、Mは、排水管と浄化槽の撤去に反対していました。
(4)以上のように、本件土地内に隣地所有者と共有共用の排水管と浄化槽が存在したため、Xは予定した工期で建売住宅の分譲を行うことができなくなってしまいました。
そのため、やむなく、Xは、Kとの間で締結していた売買契約を手付金倍返しとして合計100万円を支払うことで解除しました。
(5)Aは、本紛争の解決のため、自己の費用で本件排水管と浄化槽を撤去しました。
また、 Xは、媒介業者Bの責任を追及し、Bは、調査不足であったことを認め、Xに対し受領済みの仲介手数料を返還しました。
(6)Xは、Aの瑕疵担保責任、又は信義則上の告知義務違反 (債務不履行)を根拠として、 Aに対して損害賠償請求を行いました。
各当事者の言い分(意見陳述)
<買主(宅建業者)Xの言い分>
(1)排水管と浄化槽の存在を地表面からは確認できず、また排水管と浄化槽が隣地所有者Mとの共有共用であることは知らなかった。
(2)本件建物を取り壊し、本件土地を造成して分譲することが、当初の予定どおりにできなくなった。
(3)以上のことから、Aには暇疵担保責任、又は信義則上の告知義務違反かあるので、損害賠償として以下の金額を支払うよう請求する。
①土地分譲代金の下落分2,810万円
②分譲が遅れたことにより手付解約した転売契約の手付倍返分50万円
③工事遅延により負担せざるを得なかった銀行借入金利負担分220万7,629円
④本件土地の固定資産税・都市計画税分18万4,200円
<売主Aの言い分>
(1)本件浄化槽の存在は容易に認識できるのであるから、隠れた瑕疵には当たらない。
(2)Xは、本件売買契約において、本件不動産を現状有姿のまま買い受け、売主の瑕疵担保責任を免除する特約を了承している。
(3)Xは宅建業者であるから、本件売買契約締結に際し、現地を検分していないはずはなく、本件排水管等の存在を看過するはずがない。
(4)本件売買契約の目的物は本件不動産で、債務の本旨における履行は本件不動産の引渡しであるから債務不履行はない。
仮に、排水管と浄化槽の存在が隠れた暇疵に当たるとして害は発生していない。損害賠償の範囲が信頼利益に限定されることは確定した判例であり、本件排水管等の撤去費用はこちらが負担している。
※信頼利益とは、相手方が瑕疵のないものについて売買契約が完全に成立したと信頼したたった損害のことです。
本紛争事例の問題点
本紛争事例の問題点は、
(1)隣人と共有共用の排水管と浄化槽の存在は隠れた瑕疵に当たるか。
(2)瑕疵担保責免責の特約があっても、瑕疵担保責任を追及することができるのか。
(3)瑕疵担保責任に基づく損害賠償の範囲はどこまでか。
などでしょう。
本紛争事例の結末
裁判所の判断は次のとおりでした。
(1)Xは、排水管と浄化槽が隣地所有者Mと共有共用であることを知らなかった。
また、
①排水管と浄化槽の存在を地表面からは認識できないこと
②重要事項説明書に排水管と浄化槽が共有共用である旨の記載がないこと
③Mが排水管と浄化槽の撤去に反対していること
などからして、排水管と浄化槽の存在は、民法第570条の隠れた暇疵に当たると解する。
(2)瑕疵担保責任の範囲を限定する旨の特約の存在は認定する。
しかし、
①自己の所有する家屋の浄化槽の状態やその管理費用は通常重要な関心事であること
②浄化槽の維持管理費用の支払に関する供述が非常に不自然かつ不合理であること
③Mは排水管と浄化槽が共有共用であることを知っており、Aとの間において浄化槽に関することを懸案事項と位置付けていたこと
④さら MはAに対し自分の承諾なくしては本件土地を売ることができないと公言していたこと
などからして、Aは排水管と浄化槽の存在について悪意である(知っていた)と認定できる。
したがって、Aがその存在を売買契約締結時にXに告げなかったことで民法第572条による瑕疵担保責任を認めることができる。
(3)瑕疵担保責任に基づく損害賠償の範囲は、信頼利益に限られる。
また、信義則上の告知義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償責任については、法定責任たる暇疵担保責任とは相容れないものである。
したがって、前記の転売契約における手付倍返(解約金)分の50万円につい て民法第570条の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を認める。
本紛争事例に学ぶこと
(1)不動産取引において、当該不動産の上水道や下水道の設備の状況、配管位置、その所有者、さらに維持管理費用等の説明は、業法第35条に基づく重要説明事項です。
本紛争事例の隣人との共有共用の排水管や浄化槽が存在しているという事項もその維持管理費用の説明と併せ、当然に重要な説明事項であり、告知しないと法に違反することになります。
(2)上下水道やガスなどの設備に関し、他人の配管が売買対象地を経由していることや、排水等が隣接地との共有となっていることは、古い時代の分譲地などでは多く見受けられました。
このような事態が引渡し後に判明すると、当事者間でトラブルとなる可能性が高いので、媒介(仲介)業者としては、売買対象地だけでなく、隣接地等の配管状況にも注意し、必要があればその所有者に聴取し、同意を得て役所等での調査を行うことが重要なのです。
(3)令和2年4月1日施行の民法改正により、従来の瑕疵担保責任は契約不適合責任に変更されましたが、売主の契約不適合責任を免責する特約があっても、売主が契約不適合の事実を知りがら買主に告げなかった(悪意である)ときは、その責任を免れないという取扱いは、今までどおり維持されています(民法第572条)。
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