ローン特約条項による買主の解除権行使にかかる仲介業者の助言義務違反が債務不履行責任に問われた判例
今日ご紹介するのは、
媒介(仲介)業者が、ローン特約条項に基づく買主の解除権行使の判断等について、買主に対する助言を怠ったとして、債務不履行責任が認められた事例についてです。
なかには、ローン申込代行手数料と称して11万円や15万円もの高額費用を請求しているにもかかわらず、契約条項の助言をしない不動産業者もいるようですので、ご自身を守るためにも、最後までお読みください。
紛争事例の内容(住宅ローン特約の買主への助言)
(1)買主Xは、平成20年9月、売主A社との間で、土地建物を代金4,500万円で購入する契約(以下「本件売買契約」という)を締結し、同日、A社に手付金として225万円を支払いました。
本件売買契約には、特約として以下のような約定を定めています。
①相手方が本契約上の債務の履行を怠ったときは、書面による催告の後に、本契約を解除することができ、売買代金の10 %相当額の違約金を請求できる。
②ただし、買主Xは、本契約締結後、金融機関に対して住宅ローンの借人れを申し込み、その全部又は一部につき同年10月2日までに借人れの承認を受けられないときは、同月13日までの間、本契約を解除することができ、売主A社から無利息で既払金の返還を受けることができる。この場合には、①の違約金は発生しない。
(以下、②の条項を「住宅ローン特約」という)
(2)買主Xは、平成20年9月、売買契約に先立ち、媒介(仲介)業者Bと媒介契約を締結し、本件売買契約の締結時に、約定報酬(仲介手数料)の約半額の75万円をBに支払いました。
(3)Xは、Bから紹介を受けた金融機関Gに対し、Bを通じて住宅ローン借入れの申込みをしたが、借入れは実現されず、住宅ローン特約による買主の契約解除権行使の期限も過ぎてしまった。
結局、Xは残代金の支払いの遅滞に陥り、いったんは代金支払期限の延期がされたものの、最終的には平成21年6月に売主A社が本契約を解除した。
(4)その後、売主A社は、買主Xに対し、売買契約に基づく違約金(手付金没収後の残額)として計225 万円の支払を求める訴訟を提起した。
Xは、住宅ローン特約に基づく解除権は上記期限後も行使できるものとし、これを行使したなどとして、 Aに対し既払の手付金225万円の返還を求める反訴を提起しました。
平成23年3月の一審判決は、Aの本訴請求をすべて認容しXの反訴請求を棄却した。
Xはこの判決について控訴したが、控訴審において、XがAに対し解決金を支払う内容で訴訟上の和解が成立し、平成23年9月、XはAに200万円を支払った。
(5)Aとの訴訟の結果を受けて、Xは、媒介(仲介)業者Bに対しては債務不履行、金融機関Gに対しては不法行為による賠償責任に基づき、XがAに支払済みの手付金や上記解決金相当額等の支払いを求める訴訟を提起しました。
紛争事例の経緯
紛争事例の経緯を簡単にまとめると
年月日 | 出来事 |
平成20年6月頃 | Xは本件物件購入希望をBに申出る |
07月22日 | XはBを通じてGに住宅ローン事前審査相談票を提出 |
09月07日 | XはAと売買契約締結(決済日11月21日までの予定) |
10月13日 | 住宅ローン特約による契約解除期限 |
11月20日 | 決済日を11月28日までに延期 |
11月21日 | XはG訪問 住宅ローン本申込 |
11月26日 | 団体信用生命保険への加入が否認された旨GはBに連絡 |
11月28日 | 決済日を12月26日までに延期 |
平成21年5月28日 | Aから6月8日までに残代金の支払がなければ契約解除の旨通知あり |
06月08日 | 決済できず |
06月09日 | 契約解除 |
上記のようになります。
各当事者の言い分(意見陳述)
<買主Xの言い分>
(1)BはXとの間で媒介契約を締結し、XがBから住宅ローンを借入れるために必要な手続の委任を受けていたのであるから、売買契約の締結後はGに対して速やかに借入れの申込みができるよう手続を進める義務を負っていた。
にもかかわらず、Bは、これを怠り、Xが住宅ローン特約により売買契約を解除する機会を失わせたものであるから、媒介契約又は委任契約上の注意義務に違反しており、債務不履行の責任がある。
(2)Gは、Xから、Bを通じて住宅ローンの事前審査の申込みを受けているのであるから、 住宅ローンの取扱銀行として、住宅ローン特約で設定された期限等を確認した上、これに間に合うように借入れの申込みを行うことをXに促すべきであった。
Gがこれらの行為を怠ったことは、不法行為となる。
<媒介(仲介)業者Bの言い分>
(1)Bは、Gの指示に従ってXの借入手続を代行しており、媒介契約又は委任契約上の義務に違反する点はない。
(2)Bは、平成20年7月、Xから受領した住宅ローンに関する事前審査の申込書をGに差し入れており、その後のGとのやりとりなどにおいても義務違反はない。
<金融機関Gの言い分>
Gは、Xから住宅ローンの事前審査の申込みを受けていたとしても、 Xが主張するよ うな義務を負うものではない。
本紛争事例の問題点
本紛争事例の問題点は、
(1)媒介業者は、買主における住宅ローン借入れの可否の判断や、これによる住宅ローン特約に基づく解除権行使の判断について、助言等を行うべき義務を負うか。
(2)住宅ローンの事前審査申込みを受けた金融機関は、買主に借入手続等を促す義務を負うか。
になるでしょう。
本紛争事例の結末
判決では、媒介(仲介)業者Bに対し、媒介契約に基づく債務不履行責任を認め、売主A社に支払済みの手付金・前記解決金、及びBの受領済み媒介報酬等、合計500万円余の賠償を命じました。
一方、金融機関Gについては、不法行為責任を否定し、Xの請求を棄却しました。
(1)本件の媒介契約書には、Bが行う業務として、売買契約の相手方との間で契約条件の調整等を行い、契約の成立に向けて努力するほか、登記、決済手続等の目的物件の引渡しに係る事務の補助を行う旨が記載されています。
実際にも、BがXに代わってGと折衝し事前審査書類を提出するなど、Bが住宅ローン借入れに関する交渉窓口として行動していたものとみることができます。
(2)本件売買契約には、平成20年10月13日を買主からの契約解除権行使の期限とする住宅ロ ーン特約が付されていました。
Bは、本件売買契約の締結後、住宅ローンの借入れが否認された場合にはXが契約解除権を行使して損害の発生・拡大を防止する機会を確保するために、可能な限り借入れ可否の判断が上記期限までに出ること目指してGと交渉し、 その結果を報告するなどして、借入れに必要な手続をXに促すなどの助言を与える義務を負 っていたというべきなのです。
(3)認定した事実に基づけば、本件売買契約の締結後、BがGに必要な手続・提出書類等を確認し、Xへ速やかに借入れの申込みを行うよう助言を与えることは容易であり、それを行っていればGから借入れできないことが期限までに判明し、Xは住宅ロ-ン特約に基づく解除権を行使することが可能でした。
にもかかわらず、平成20年11月11日頃までの間、Xは借入れの申込みをしておらず、これはBがGとの折衝状況や必要な手続を正確に説明せず、必要な助言等も行っていないことによるものと認められ、媒介契約上の義務を怠ったものというべきです。
(4)したがってBは、Xが住宅ローン特約により本件売買契約を解除する機会を失ったことによって生じた損害について、賠償責任を負うべきである。
(5)金融機関Gについては、交渉窓口のBがXに助言を与えていたと考えて当然であり、さらにGがXに手続を積極的に促すなどの義務を負うべき根拠は見当りません。
本紛争事例に学ぶこと
(1)本紛争事例では、媒介業者の債務不履行責任が認められた理由の一つとして、媒介業者が具体的に住宅ローンの借入れに関する交渉窓口として行動していたこともあると解されるが、ローン特約条項に基づく解除権行使に関し、買主への助言義務を認めた例として、実務上参考となる事例になるでしょう。
(2)住宅ローン特約条項の主旨は、一般消費者が住宅等を購入する際にローンを利用することが多いため、銀行等の承認が得られない場合に、一定期間内は買主がノーペナルティで売買契約を解除できるとすることで、安心して住宅等の購入申込みができるようにするというものであり、買主保護、消費者保護を目的とする規定なのです。
(3)上記の主旨を前提とすれば、媒介業者としては、交渉窓口とならないケースにおいても、買主が解除権を行使する機会を失わないよう配慮する必要があるといえます。
解除権行使の期限を十分念頭に置いて、売買契約の締結後には買主が速やかに住宅ローン申込み手続を行うよ配慮し、銀行手続の状況を把握しつつ、必要に応じて買主に解除権行使等の助言を行うことが重要になるのです。
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