不動産を共有持分で共有名義にして所有するメリットとデメリット?!
不動産を共有持分で共有名義にして所有するときの「メリット・デメリット」を教えて欲しい、という質問を受けることがあります。
もし、あなたが夫婦二人で、あるいは親御様と一緒に不動産を購入する場合、購入費用に対する出資比率で、その不動産の所有権割合「共有持分」が決まります。
今日は、不動産を共有名義にするメリット・デメリットについて書いてみたいと思います。
共有名義・共有持分とは?!
高額な不動産を購入するためには、多額の資金を準備しなければなりません。自己資金だけでは不足が出る場合は、住宅ローンの借入れが必要になります。
もし、あなた一人だけでは購入が難しい場合には、夫婦や親御様と共同で購入することもあるでしょう。
その場合、購入費用に対する出資比率で持分割合が決まります。
これを「共有持分」と言います。
そして資金を出した人全員が名義として登記されます。
その全ての人を「共有名義」と言います。
共有名義・共有持分のデメリット
一般的には「共有名義で購入したい」と考える人よりも、「年収や貯金を考慮すると、一人では購入できないので、共有で購入する」という人の方が多いように感じています。
そこで質問を受けるのが「共有名義にした場合、何かデメリットはありますか?」という内容です。
まずは、デメリットについて書いてみたいと思います。
なぜ、デメリットを先に書くかと言うと、メリットよりもデメリットのことを十分に理解していただきたいからです。
売却するときは、共有名義全員の承諾が必要です!
当り前のことですが、共有名義だと、その不動産はあなただけのものではありません。
共有名義の不動産全体を売却するときには、共有名義全員の承諾が必要になります。
もし、共有持分の割合が、あなたが100分の99(99%)、共有者が100分の1(1%)でもです。
共有持分の割合は全く関係ありません。
不動産の売買契約書には、共有名義全員の署名捺印がなければ売却できないのです。
共有名義人が亡くなった場合、その共有持分は相続の対象になります
共有名義人のどなたかが亡くなった場合、その人の共有持分は相続の対象となります。
亡くなられた人の相続人が、あなた一人であれば、その持分はあなたのものになりますので、何ら問題は発生しないと思います。
もし、相続人が複数いらっしゃる場合は、あなたの不動産は遺産分割の対象となり、共有名義人が増えることも考えられます。
その場合、上記のように売却が必要な場合は、共有者全員の同意が必要になるなど、処分に対する課題は増えることになるでしょう。
離婚する場合は、売らざるを得ない可能性が高くなります
離婚する場合は、けっこう面倒なことになることが多いのです。
離婚の場合、財産分与が必要なことはご存じだと思います。
ご自宅の場合、半分に分けて住むことはできないので、夫婦のどちらかが出て行くことになります。その場合、家を出ていく人の共有持分を、家に残る人が購入しなければなりません。
しかし、住宅ローンを借りて購入して、数年で離婚した場合は大変です。
自己資金だけでは購入ができなかったので住宅ローンを借入れしたのであれば、相手の共有持分を買うだけの資金は無いと思います。
つまり、売却するしか方法が無いのです。そして売却できれば、売却利益を持分の割合で分けます。
ただし、住宅ローンの残債よりも低い金額でしか売れない場合は、住宅ローンを全額繰上償還するための自己資金が必要になります。住宅ローンの抵当権を抹消できなければ、売却もできないのです。
余談ですが、新築を購入して数年で売却する理由として多いのが「離婚」です。
ペアローンを利用している場合では、贈与税がかかるかもしれません
例えば、夫婦でペアローンを利用して不動産を購入した場合、奥様が出産や育児なので理由で離職することで、奥様が借入したローン返済ができなくなったとします。
その返済を滞納してはいけないと思い、夫が妻の返済を肩代わりすると、「肩代わり=妻への贈与」と見なされてしまい、その肩代わり分の年間の総額によっては、贈与税が発生することになります。
その場合、その年に奥様が受けた他の贈与分も含め、その額が年間に与えられている基礎控除額を超えると、
その超過額に対して法律で定めらている税率の贈与税を、妻が負担しなければならないのです。
共有名義・共有持分のメリット
上で書いてきましたデメリットを知っていただいたうえで、共有名義にするメリットについて書きます。
それは、税制上の優遇を共有名義人それぞれが受けることができると言うことです。
住宅ローン控除を共有名義のそれぞれが受けることができる
住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高に対する1%の額が所得税から控除してくれます。
住宅ローン控除は、夫婦それぞれが申し込んだ住宅ローン(ペアローン)の年末残高に対して利用できます。
親との共有名義で、親が働いている場合も、それぞれが利用できます。
ただし、奥様が出産や子育てのために仕事を辞めるなど、共有者の誰かが仕事を辞めて収入が無くなったり、働き方が変わってしまうと、収入が無くなった人は住宅ローン控除を利用することができなくなります。
そのため「住宅ローン控除の恩恵を2重に受けられる」からといって簡単にペアローンで申し込むのではなく、将来の生活設計を良く相談してから決めることをお勧めします。
居住用財産の3,000万円特別控除もそうれぞれが受けることができる
次に居住用の不動産(自宅)を売却するときのお話です。
ご自宅を売却したことで譲渡益(売却利益)が出た場合「居住用財産の3,000万円特別控除」いわゆる、譲渡益が3,000万円までであれば税金がかからないというものがあります。
これは、共有名義の場合は、それぞれ3,000万円(合計最大で6,000万円分)の控除を受けることができるため、高額な売買の場合にはメリットがあるといえます。
簡単にいうと、単独名義の場合、家を売って3,000万円以上の利益が出た場合は税金がかかりますが、夫婦共有名義だと最大で6,000万円までの利益であれば、税金がかからないということになります。
しかし、投資用不動産であればともかく、居住用の不動産で、それだけの利益が出ることは、ほとんど無いと思います。
もし、ご自宅を売却したことで3,000万円以上の利益が出たとしても、意図せず共有名義にしていたことで、6,000万円の控除を受けることが、たまたまできたくらいの話であって、ダブルの控除を目的に共有名義にする人はほとんどいらっしゃいません。
まとめてみました
不動産を共有名義にして共有持分を持つことのメリットは、税制上の恩恵が受けられることくらいしかかありません。
それも、共有者、例えば夫婦それぞれが、将来的にも安定した収入があり、もちろん仕事も続けるという前提でのメリットです。
そのことを第一に考えて共有名義にすると、デメリットだけが残ってしまうこともあるということです。
言い換えると、共有持分を持って共有名義にする理由は、共有名義にしなければならない、避けられない理由があると言うことです。
共有名義にすることでのデメリットを理解して決めていただきたいと思います。
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