「筆界」と「所有権界」が一致しないことで起きる「土地の境界トラブル」
私たちが普段何気なく口にしている「境界(きょうかい)」という言葉ですが、実は奥が深く「筆界(ひっかい)」と「所有権界(しょゆうけんかい)」に大別されています。
この「筆界」と「所有権界」は当り前に一致していなければならないのですが、何らかの原因で一致していないことがあります。
この不一致が原因で、思いもよらない境界トラブルに発展するのです。
今日は、この「筆界」と「所有権界」についてと、この二つの関係について書きたいと思います。
筆、加古川の不動産売買専門店 未来家不動産株式会社 代表 清水浩治
土地の境界トラブルを防ぐ最善の方法とは!
不動産のことで、お隣さんと揉める原因で一番多いのが、土地の境界トラブルです。
土地を売るときや、ご自宅を建て直すときなど、何かことを進めようとするときに、このトラブルは襲ってきます。
「登記はちゃんとしているから大丈夫!」だなんて思わないでください。
境界のトラブルは、簡単に考えていると、今まで平穏にお付き合いをしていたお隣さんと険悪な関係になり、最終的には訴訟にまで発展しかねない問題なのです。
ですから、売買で土地を取り扱うときには、「筆界」と「所有権界」に不一致がないか、もし、あるのであれば、その原因を探して一致させていく!
これが境界トラブルを防ぐ最善の方法になるのです。
筆界は「公法上の境界」と呼ばれています
平成17年の不動産登記法の改正によって、はじめて「筆界」という言葉が明文化されました。
「筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という)と、これに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ)との間において、当該一筆の土地が登記された時に、その境を構成するものとされた二以上の点、及びこれらを結ぶ直線をいう」(不動産登記法第123条第1号)
「土地が登記された時」というのは、公簿や公図ができて地番というものが公示された明治時代の地租改正事業のときで、「筆界」は、不動産登記法によって存在する「一筆の土地の外縁」のことを言います。
これは、お隣さん同士の話し合いで、勝手に変更したりすることのできない不動のものであって、地租改正以来ずっと継承されてきました。
「筆界」を現地で探す方法は、法務局にある「地図・公図・地積測量図」等を手がかりに見つけていくことになります。
所有権界は「私法上の境界」と呼ばれています
お隣さんと接する土地において、双方の所有権と所有権がぶつかり合うところが「所有権界」です。
「ここからここまでが私の土地ですよ」という、民法による所有権の概念として存在していて、現地では、垣根やブロック塀、あるいは境界標などを設置して、見て分かるようにに表示しています。
土地所有権の成立は、諸説ありますが、明治初期と言われています。「所有権界」もまた地租改正以来ずっと継承され、人々の話し合いによって、その線形を変えながら現在に至っています。
「所有権界」を現地で探す方法は、土地所有者が現地に集まって「境界確認の立ち会い」を行う方法、あるいはブロック塀や境界標などの位置を検証する方法などが一般的です。
「筆界」と「所有権界」が本来一致している理由
地租改正時に作成された図面は、もともと「所有権界」を図面化されていて、それが「公図」となり「公簿」になっていきました。
ですから、図面の作成時点で「所有権界」=「筆界」、つまり「筆界」が形成された時点で、「筆界」と「所有権界」は一体のものだったのです。
これが「筆界」と「所有権界」が本来一致している理由です。
「筆界」と「所有権界」が不一致になる原因
1.「筆界」を表す「地図・公図」「地積測量図」等に、過失や故意の問題があって、「所有権界」の位置と一致しない場合があります。
その場合は「地図・公図」「地積測量図」等を訂正すれば良いのですが、それをしなかった為に不一致となります。
2.お隣同士の話し合いで「所有権界」が変更され、それを現地に表すために新たなブロック塀を設置したのですが、分筆登記はしなかった。
分筆登記をしなければ「地図・公図・地積測量図」に変更は反映されず、変更後の「筆界」も存在しません。「筆界」は以前のままなのに、「所有権界」は変更されているという状態。
1も2も、単なる「筆界」と「所有権界」の不一致と放置されていたものが、「境界」トラブルへと変貌していきます。
分からりやすい例を挙げると、時間の経過とともに資料が紛失することや、記憶が薄れることが考えられますが、
もっと深刻なのが、土地の所有者が移り変わっていくことで、「筆界」と「所有権界」が不一致になったことに全く知らない、未来の所有者が、そのことが原因で「境界」トラブルに巻き込まれてしまうことです。
新しい土地所有者が、訳も分からず苦悩と後悔している事案もあるのです。
「筆界」と「所有権界」の不一致への対応
お隣さん同士の話合いで解決できることが一番良いのですが、解決に至らない場合は、司法の判断を仰ぐことになります。
民法上では意思表示のみで変動する「所有権界」と、不動産登記法により存在する不動の「筆界」を一致させるためには、不一致の原因を法的に検証し、何が問題になっているかを整理し、どちらかをどちらかに合わせていくことになります。
この「筆界」と「所有権界」について、訴訟を担当する裁判官や弁護士も非常に頭を悩ませると聞いたこともあります。
例えば、弁護士は、民法上の「所有権界」から整理して、最終的に「筆界」を「所有権界」に合わせるという方法を取る場合が多いようです。
測量のプロである土地家屋調査士は、不動産登記法上の登記資料等で証拠を検証しながら現地を測量し「筆界」を探し、最終的に「所有権界」を「筆界」に合わせるという方法をとる場合が多いですね。
どちらが最善の方法かは、事案によりますが、その状況に応じて慎重に対応していく必要があると思います。
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