公簿売買と実測売買 トラブルに発展する公簿売買は不動産業者の担当者が「公簿売買」の本来の意味を理解していないために起きるのです!
土地の売買では、売主様と買主様の間で、面積の広さについてのトラブルが起きることがよくあります。
その多くは「公簿売買」という契約方法を選んでいることが原因です。
それは、不動産業者の担当者が「公簿売買」の本来の意味を理解していないことでトラブルになっているのです。
不動産の売買には「公簿売買」と「実測売買」の2種類が有るのですが、その違いを正しく理解してトラブルを回避して欲しいと思います。
そこで今日は、土地売買における「公簿売買」と「実測売買」の契約内容と、トラブルを回避する方法を書いていきたいと思います。
不動産売買契約での土地面積の取扱い方法
住むための不動産は、一戸建て、マンション、そしてマイホームを建築するための土地ですね。そのなかでも特に一戸建てや土地を購入するときには、対象の土地の面積は重要な要素になると思います。
売主様も買主様も、周囲の相場と比較し、その土地の価格が適正なのかを、坪単価や平米単価を土地面積に掛けて判断します。
そして、土地面積は重要事項説明書や売買契約書に明記されていますが、その面積は、登記記録(登記簿謄本)に記載されている面積が基本になります。これが「公簿面積」です。
しかし、この「公簿面積」が、実際に測量する「実測面積」と異なることもあるので、売買契約の方法には、「公簿面積」を基準にする「公簿売買」と「実測面積」を基準にする「実測売買」の2種類があるのです。
公簿売買は、登記記録の面積で価格を確定する契約で、実測精算はしません
「公簿売買」では、土地を測量した結果、登記記録の面積と異なっていても、売買価格は変更されません。
したがって、「公簿売買」では、契約条件として実際に測量をすることは、ほとんどありません。契約条件とは別に測量をしても、その結果によって売買価格の変更は行いません。
売主様も買主様も、価格の妥当性を面積×単価で判断されることが多いので、実測売買のほうがトラブルの回避になるのですが、実際には多くの場面で「公簿売買」で契約しています。
また、土地の測量には費用や時間もかかるので、当事者がこれを避けようとすることも、「公簿売買」を選択する要因になっています。
「公簿売買」の場合には、重要事項説明書と売買契約書に、その旨が明記されます。
また、「公簿売買」であることが明記されていない場合でも、単価が表示されていない場合には公簿売買であることが推定されます。
しかし、単価表示がなければ必ず「公簿売買」だと解されるとは限らないので、基本的には「公簿売買」である旨を明記するべきです。
実測売買は、実際に土地を測量して最終価格を確定する契約です
実測売買には2種類あります。
①売買契約時は、予め定めた単価×登記記録面積で売買価格を定めておき、後日、実測面積と公簿面積に差が出た場合は、予め定めた単価で差額を精算します。
②売買契約前に測量を行い、確定した面積に単価を掛けて売買価格を決定し、公簿面積との差異を明記する契約。
どちらも、実際に土地の広さを測量して価格に反映させるので、当事者間のトラブルは回避できる契約方法です。
多くの人が、面積×単価で価格の妥当性を判断していることにも合致しています。
土地の測量には費用と時間が必要です
実測には、測量のプロである「土地家屋調査士」に依頼するため、費用が必要です。基本的にはその費用は売主が負担するのですが、売主、買主の合意によって決める場合もあります。
実測を行うためには、隣地との境界を確定させる必要があります。
その場合、隣地所有者や道路管理者(自治体など)の立会と協力が必要となりますので、測量が完了するまでには、時間も必要となります。
売主、買主が合意し「実測売買」を選択する場合には、
1.その旨と基準となる土地面積(公簿面積)と精算単価、
2.それによって求められた暫定の売買価格、
3.合わせて、測量方法(確定測量なのか現況測量なのか)や、
4.いつまでに測量図を完成させるのか、などが、
重要事項説明書と売買契約書に記載されます。
トラブルが生じやすい公簿売買
「公簿売買」と「実測売買」では、
当事者間のトラブルが大きくなりやすいのは「公簿売買」の方です。
登記記録上の面積と、後日実測した面積が狭いことがトラブルの原因で、その多くは、買主が不満に感じる場合です。
「公簿売買」は、土地の面積が実測により差異が生じても、売買代金の増減を行わず、お互い異議申し立てをしない契約であり、実測面積が、広ければ売主が、狭ければ買主が損をすることになるというリスクを承知していることが大前提です。
それにもかかわらず、トラブルになってしまうのは、「公簿売買」の意味やリスクを十分に理解していないことや、実測によって判明した面積が、予想を超えていて許容できないほどの差異がでたことが原因です。
契約書面に「公簿売買」と明記されていても、不動産の専門家ではない一般の人が、その意味を十分に理解できているとは限りません。
また、実際に「公簿面積」と「実測面積」に差異が生じることが多いにもかかわらず、一般の人は、法務局に備え付けられている登記記録や公図、地積測量図が全て正しいものだと信じているいることも原因の一つだと思います。
また、実測によって判明した面積では、土地を購入した目的が達成できなくなる可能性もあります。
たとえば、予測よりも大幅に実測面積が狭いために、計画していた建築プランの実現ができない場合です。
納得する建物を建てられないのなら、買主は売買契約そのものを無かったことにしたいと考えるでしょう。
このような状態では、契約書に「公簿売買」と明記されていても、契約内容を正しく理解していたとは言い難いかもしれません。
「公簿売買」でのトラブルでは「契約の錯誤無効」が主張される場合もあります
説明を受けた売主、買主が、
「公簿売買」の意味を理解していなかった場合、
その意味が理解できていれば契約はしなかったと不満をもった場合や、
理解していても、実測により生じた面積の差異が、予想の範囲を大幅に超えていたら、「契約の錯誤無効」を主張してくる可能性があるのです(民法95条)。
許容できる差異の範囲は、売買の目的により限度が変わるため一概に言えません。
例えば、建物を建築する目的で土地を購入する場合、希望の広さの建物が建築できない場合、「契約の錯誤無効」を主張するかもしれません。
あるいは、資金調達のために売却するのであれば、平米単価が高い土地の取引では、差異が小さくても「契約の錯誤無効」を主張するかもしれません。
いずれにしても、「実測面積」との差異を理由に、後日契約が無効になったのでは、意味がありません。
したがって、「公簿売買」では、後日トラブルにならないように十分な説明と注意を払うことが必要になるのです。
「公簿売買」でのトラブルを回避する方法!
一番重要なのは、不動産会社の担当者が「公簿売買」の本来の意味と、トラブルに発展する理由を理解することです。
そのうえで、トラブルを回避するために、売主様と買主様に「公簿売買」について十分に説明し理解していただくことです。
そのためには、
①「公簿面積」と「実測面積」に差異が生じても売買代金の増減を清算しないこと、
②「公簿面積」と「実測面積」に大きな差異が生じる可能性があること、
③大きな差異が生じてもお互い異議申し立てをしないこと、などを
当事者が十分に理解できるように説明をする義務を、売買の仲介に入る不動産業者が当り前に負うことです。
そうすることで、「公簿売買」で大きなトラブルが生じる可能性は、ほとんどなくなるはずです。
そして、売買契約前に「公簿売買」ではトラブルになりそうな空気を感じたのであれば、費用と時間が必要にはなりますが「実測売買」を提案し、その意味とリスクを理解できるまで説明してくれるような不動産業者を選ぶのも、トラブル回避の方法だと思います。
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