ローン特約(融資利用の特約)によるトラブル!不動産業者の認識間違いで白紙解除が認められずトラブルに!
不動産の売買契約が決まると、気持ちが「ほっ」とすると思います。
しかし、買主が住宅ローンを利用する場合は、一般的に「ローン特約(融資利用の特約)」を付して契約しますので、融資承認が出るまでは手放しで喜べません。
買主が申し込んだ住宅ローンの審査が否認されてしまうと、契約は白紙解除になり、またいちから売却活動を再開することになります。
しかし、ローン特約に対する不動産業者の間違った認識が、買主様を誤った方向に誘導してしまい、白紙解除ができなくなりトラブルに発展することがあるのです。
そこで今日は、「ローン特約(融資利用の特約)とは?」「ローン特約による契約解除が認められないケースとは?」「ローン特約でトラブルにならないための注意点!」について書いてみたいと思います。
少し長くなりますが、買主様にとっては重要な内容ですので、できれば最後までお読みいただければと思います。
ローン特約(融資利用の特約)とは?
「ローン特約」あるいは「融資利用の特約」とも言いますが、住宅ローンの融資審査が否認され、買主が購入を諦めざるを得ない場合に、ペナルティなしで契約を白紙解除できるという、買主保護の観点から付される特約のことです。
この特約は、買主が融資を利用するときは、ほとんどの場合、売買契約に付加されます。
不動産を購入する場合、住宅ローンを借りて購入する人がほとんどです。
しかし、ローンの審査は金融機関の基準によりますので、収入や年齢、勤務先や勤続年数、個人信用情報などから、申し込んだ全ての人が必ず借りられるわけではありません。
住宅ローンの審査に落ちてしまうと買主は購入を諦めざるを得ないのですが、ローン特約が付されていない場合は、手付金を放棄するなどしなければ契約解除ができません。
しかし、それでは善意の買主にはリスクが大きいので、「ローン特約」をつけることが一般的になったのです。
全てが白紙解除を認めるわけではありません!
売買契約にローン特約が付されている場合と付されていない場合の解除の違いは、次の通りです。
◆ローン特約が付されている場合、買主はペナルティなしで契約を解除することができます
◆ローン特約が付されていない場合、買主は手付金の放棄や違約金を支払わないと解除できません
ローン特約は、買主の都合による契約解除でありながら、買主保護の観点から、買主に損失が生じない特約です。
しかし、買主の都合で、しかも無条件で白紙解除になってしまうことは、売主の立場に立つと、完全に不利な特約でもあるのです。
ただし、ローン特約による契約解除が「認められるケース」と「認められないケース」があることを知っていてください。
ローン特約は買主を保護するために付加されるものですが、どんな場合でもローン特約が適用されるわけではありません。
白紙解除が「認められるケース」
ローン特約による白紙解除が認められるのは、重要事項説明書や売買契約書に記載している申込金融機関・申込金額・返済期間・金利で融資が受けられなかったときに、買主は契約をペナルティなしで白紙解除ができます。
この場合、売主は、買主に既に受領済みの手付金を返還しなければなりません。
ただしローン特約の適用は、住宅ローンの不成立に買主が善意無過失が条件です。ですから、買主は金融機関に対して住宅ローンの審査が通るように誠実に対応し努力しなければならないのです。
もしも買主に、隠している借金があったり、住宅ローン申請書に虚偽の内容があった場合は、ローン特約の適用は受けることはできません。
白紙解除が「認められないケース」
ローン特約による契約解除が認められないケースは、買主が故意に住宅ローンの審査に通らないようにしていた場合や、重要事項説明書や売買契約書に記載している申込金融機関・申込金額・返済期間・金利とは異なる申込みをしていた場合です。
この場合は、買主は白紙解除ができず、売主からも手付金を返還してもらうことはできませんし、違約金の請求を受けることもあります。
この認識が無い不動産業者が、契約内容の融資金額を増額して申し込んでもローン特約が適用されると思い、買主に間違った説明をしてしまい、審査が否認されたときに白紙解除ができず、トラブルになっています。
それでは、具体的にどのようなケースが認められないのかを書いてみたいと思います。
予定金額を増額してローンを申し込んだ場合
重要事項説明書や売買契約書に記載されているローン特約の予定申込金額を勝手に増額して金融機関に申込みをしていた場合、ローン特約の適用は受けられません。
例えば、
資金計画に親御様からの資金援助が含まれていたが、事情により援助が難しくなり、事前審査で承認された以上の金額で申し込んでしまった、
契約後のリフォーム見積りが思っていた以上の見積もり金額になってしまい、住宅ローンとは別に予定になかったリフォームローンも申込んでしまった、
このように、契約を進める中で当初の資金計画が増えてしまうことも少なくありませんが、申込み金額が増えれば、審査が通りづらくなり、売主にしてみれば、「契約内容と違う」となるのも当然のことです。
買主は売買契約までに、資金援助を確定させ、購入資金以外の諸費用も含め余裕を持った資金計画を立てることが重要になるのです。
わざと審査に通らないように画策した場合
住宅ローンの審査が通らないよう買主が故意に画策した場合、ローン特約による契約解除は認められません。
売買契約後に「購入したくなくなった」あるいは、「もっと良い物件が見つかった」など、買主の一方的な我がままで契約を解除するにもかかわらず、手付金が没収されるのを避けるために、ローン審査が通らないように画策し、ローン特約を利用して白紙解除にしようとする買主がいるということです。
ローン特約を悪意で利用した場合、特約の適用は一切認められません。
また、故意の画策は、必ずばれます!
ローン特約でトラブルにならないための注意点
ローン特約は、法律で決められているものではなくて、任意で付されているもので、明確なルールがないのも事実です。
ですから、ローン特約による契約解除を巡るトラブルが少なくないのです。
売買契約前には、必ずローン特約の内容を確認して、トラブルを回避してください。
主な確認内容は次の通りです。
「解除条件型」か「解除権留保型」かを明確に
ローン特約には、「解除条件型」と「解除権留保型」があります。
◆解除条件型は、買主が融資を受けられなかった場合、自動的に契約解除になります
◆解除権留保型は、買主が融資を受けられなかったことを申し出ることによって契約解除になります
解除条件型なのか、解除権留保型なのか、曖昧だと、融資が否認されたときにトラブルに発展する確率が高くなりますので、必ず明確にしておきましょう。
たとえば買主は解除条件型、売主は解除権留保型だと思っていた場合、買主は自動的に契約が解除となると思っていたが、売主は連絡があるまで契約は有効だと思っています。
ローン特約による契約解除期限が過ぎてから、この認識のズレが発覚し、契約の有効性を巡ってトラブルになるのです。
売買契約までにローン特約の契約解除期日を定める
売買契約までに、ローン特約の契約解除期日について打合せが必要になります。
売買契約書には「融資承認取得期日」と「契約解除期日」を記載しますが、申込み予定金融機関と打ち合わせを行い、融資承認がいつ頃までになら取得できるのかを確認し、売買契約締結から2週間から3週間を目安にローン特約日を決めてください。
金融機関の手続き上、予定通りに審査が進まないこともありますので、少し余裕を持った日に設定することで、円滑な取引ができます。
事前審査の承認を受けてから契約を締結しましょう!
売主にとって不利な条件なので、ローン特約なしで契約したいという売主様もいらっしゃると思いますが、買主様が融資を利用する場合、ローン特約なしで契約することは、ほとんどありません。
売主からすると納得のいかない特約かもしれませんが、ローン特約がなければ、買主のリスクの方が高くなるため、特約なしで契約する買主様はまずいらっしゃらないからです。
ですから、買主は売買契約までに、ローンの事前審査を受け、承認後に契約に臨んでほしいのです。
ローン特約は買主を保護する目的で付加するものですが、事前審査も受けていない状態でローン特約を付けて売買契約を交わすのは公平性に欠けます。
売主は、買主の事前審査内容と承認を受けているのかを確認したうえで、売買契約を締結すれば、ローン特約による契約解除のリスクと不安を減らすことができるでしょう。
契約解除の意思表示は書面で通知しましょう!
契約解除の意思表示は、必ず書面で行なうことをお勧めします。
なぜ書面かというと、ローンが否認されたことによる買主の契約解除の意志が売主にうまく伝わらず、トラブルになるケースがあるからです。
例えば、
①仲介業者へ連絡したことで契約解除の意志表示をしたと思っている買主様、
②その連絡を受けた買主側の仲介業者が、売主側の仲介業者に連絡したことで、買主の契約解除の意思表示をしたと思っている不動産業者、
③売主側の仲介業者が、売主に伝えた日が契約解除期日を過ぎてしまうと、必ずトラブルに発展します。
契約解除の意思表示を仲介業者を通じて行うというところにトラブルの原因があるのです。
もちろん、仲介業者に契約解除の意思表示を伝えることも必要ですが、仲介業者に伝えると同時に、買主から売主へ書面で通知することをお勧めします。その場合、内容証明郵便を使うと確実です。
ローン特約についての認識は不動産会社の担当者によって間違っている場合があります。
まずは、契約の当事者になるあなたが、あなた自身を守るために、今日の内容を理解していただくことで、担当者の間違いに気づくことができればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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