不動産の相続登記を放置すると、将来に火種を残すことになります!Part2:増え続ける法定相続人
前回Part1では、「法定相続と共有持分」について書きました。
今日のブログは、その内容を基に「不動産の相続登記を放置すると、何故、将来に火種を残すことになる」のか、について書きます。
不動産の相続手続きを行わないで法定相続持分のまま放置していると、2次相続、3次相続が発生し、3代も続くと法定相続人が数十名になり「所有者不明土地」と呼ばれる物件になってしまいます。
このように、共有者(法定相続人)が雪だるま式に増え続け、全国に散ってしまい、現在「所有者不明土地」は、国内で九州以上の面積があるとされ、大きな社会問題になっています。
そこで、今日は、何故、不動産の相続手続きを行わず放置してしまうのか? 放置することで、どのような悪影響が起こっているのか? について書いてみたいと思います。
法定相続持分割合(共有名義)のメリット?!
あまり望ましくはないのですが、現実的に不動産を相続するには、誰か単独で所有するのか、法定相続割合で所有するのか、ほとんどの場合、揉めることになります。
そのため、結論が出ないまま、法定相続の共有状態のままで放置されているのが実状だと感じています。
相続放置が増えている理由に、法定相続割合(共有持分)に、それなりのメリットがあるからです。
法定相続持分のままは、法の基では平等?!
法定相続持分で共有のままにしておけば、法の基では平等に分けることができます。
言い換えると、相続財産(遺産)の中に不動産があると、法定相続分割合では分けることができない原因になるのです。
例えば、相続財産が、家(土地・建物)が2,500万円、現金が500万円で、相続人が子ども2人だけとします。この場合1/2ずつが相続割合ですので財産3,000万円のうち、1,500万円ずつを相続する権利があります。
しかし、、兄に家2,500万円、弟に現金500万円を分けると大きな不平等が生まれます。このように、不動産を誰かの単独所有にすると、平等性を失うので、相続人間で揉める原因になります。
相続が「争族」となるのは、ほとんどが分けにくい不動産の存在が原因です。
ですから、法定相続持分(共有)のままにしておけば、平等であり争わずに済むので、放置してしまう原因になるのです。
相続登記をしなければ費用が発生しない!
相続した不動産を誰かの名義にするには、相続登記(所有権移転登記)が必要となり、登録免許税が発生します。
ただし、相続では、所有権移転登記を義務付けていません。相続人全員が納得していれば、所有権の移転登記は行わなくても良いのです。
そのため、相続発生後、名義人が確定していても、相続登記をしない人も多いのです。
このように、登記が放置されるのは「わざわざ税金を払ってまで移転登記したくない」という思いが原因にあります。
法定相続割合のまま放置するメリットには、所有権移転登記の費用が発生しないということがあります。
放置していれば、手間も費用も掛からない!
何もしなければ手間も費用も掛からない、面倒臭くないといったメリットがあります。
相続で共有のまま放置される不動産は、山林や郊外の土地などの資産価値が低い土地が多いようです。資産価値の低い土地は、売却しても高く売れません。
山林に至っては、固定資産税評価額が低過ぎて、元々、固定資産税すら発生していないことが良くあります。固定資産税は、課税標準が30万円未満だと、免税になります。
しかし、売却するためには、所有権移転登記や、境界の確定のための費用、長期間にわたる販売活動の大きな手間がかかりますが、大した金額で売れなければ、費用対効果に見合わないです。
保有していても特に経費が掛からない、一方で何かしようとすると余計な費用が掛かるという状態であれば、「放置」と考えてもしかたありません。
不動産によっては、法定相続割合で放置していても、何の手間も費用も掛からないというのもメリットかもしれません。
法定相続持分(共有名義)のまま放置のデメリット!
「相続人同士で争わなくて良い」とか「費用や手間がかからない」といった法定相続持分(共有名義)のまま放置することのメリットは、相続に直面した人だけが感じることができる短期的なメリットです。
それに対して、法定相続持分(共有名義)のままの放置は、長期的には、ほとんどデメリットしかありません。長引けば長引くほどデメリットの度合いは強くなっていきます。
それが「管理がし辛くなる」「売却がし辛くなる」のはもちろんですが、一番のデメリットが「法定相続人が雪だるま式に増えてくる」ことです。
雪だるま式に増える法定相続人!
法定相続持分(共有名義)のままの登記をせずに不動産を放置していると、雪だるま式に法定相続人(共有者)が増えるというデメリットがあります。
2次相続、3次相続が発生すると法定相続人が数十名にもなってしまういます。共有者が増え続け、全国に散ってしまい、容易に所有者が特定できない物件も存在します。
容易に所有者が特定できない不動産は「所有者不明土地」と呼ばれていて、現在、その面積は、九州以上の広さで、既に大きな社会問題になっています。
例えば、都市計画道路では、そこに所有者不明土地があると、所有者が特定できず、公共用地の買収がスムーズにできなくなります。
また、隣の土地が所有者不明土地であった場合、売却の際、境界確定しようとしたら共有者が分からす売却できないこともあります。
法定相続持分(共有名義)のままの放置は、所有者不明土地を生む原因となり、それは、社会的に悪影響を与えてしまう不動産になるのです。
管理がし辛くなる!
法定相続持分(共有名義)のままの放置を続ければ、管理もし辛くなります。民法での管理は、他人に貸すなどの外形を変更せずに利用することを指します。
Part1の通り、民法上の管理は、共有者全員の過半数の同意が必要です。
一方で、不動産には民法上の管理以外に、日常的な管理もあります。
例えば、土地なら除草、空き家なら清掃・空気の入れ替えなど、不動産が存在する以上、誰かが日常的な管理を行うことになります。
相続した実家の近くに住んでいると兄と、遠方に住んでいる弟の兄弟で共有しています。今まで、実家の管理をしていた兄が他界しため、その子供が管理を引き継ぎました。
しかし、その後、不満が出てきます。「持ち分のある叔父が何故管理をしないのか、何故自分が管理しなければならないのか」
この可能性はゼロではないと思います。
本人同士の意思で行っていた管理は、代(人)が変わると続かなくなります。
民法上の管理や、日常的な管理も、共有では管理がし辛いというのがデメリットです。
売却がし辛くなる!
法定相続持分(共有名義)のままの放置は、将来、売却がし辛くなるというデメリットがあります。
共有にする人の多くは「自分たちは仲がいいので揉めることはない」と言います。しかし、代が替わると、その関係は引き継がれません。
兄弟同士の親が他界すると、その子供たちが相続します。その関係は「いとこ」同士です。「いとこ」同士が近くに住んでいるとは限らないので、疎遠になることもあるでしょうす。
このように、代替わりが進むと、意思疎通が難しくなり、意見がまとまらない可能性も出てきます。
今の代は良くても、将来的には売却し辛くなる可能性も潜んでいますので、共有は自分の代で解消することが望ましいのです。
共有名義の解消方法
あなたの子や孫が、将来、火種をかかえないためにも、自分たちの代で共有は解消すべきです。 共有名義以外の相続方法としては、「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つの分割方法があります。
現物分割とは、被相続人の現金や車、マンションなどの財産を現物でそれぞれの相続人に分ける分割方法です。
不動産を単独所有とできるメリットがありますが、法定相続分で分けることが難しいというデメリットがあります。
換価分割とは、不動産などを売却して、売却で得た現金を分割する方法です。
現金にするため、法定相続分で分けることができるメリットがありますが、先祖から引き継いだ不動産を失うというデメリットがあります。
代償分割とは、一部の相続人が財産を多く相続したことで、不公平が生じた場合、その相続人が他の相続人にお金(代償金)を支払うことで調整する分割方法です。
代償分割は、商売をしている家系で、例えば長男がどうしてもその不動産を営業上引き継がなければいけないときに使うことがあります。
特定の人に不動産を引き継げるメリットがありますが、引き継ぐ人が代償金を支払うため、経済的な負担が重いということがデメリットです。
このように、相続では、共有以外にも様々な分割方法があります。自分たちにあった分割方法を採用し、共有はなるべく避けることを目指してください。
まとめてみました!
2回に分けて、「不動産の相続を法定割合(共有)のまま放置するのは、将来に火種をることになります!」について解説してきました。
不動産は相続発生時は、法定相続分で共有状態になっています。
共有は、短期的には「平等である」「費用が発生しない」「手間がかからない」といったメリットがあります。
一方で、長期的には、「雪だるま式に共有者が増える」「管理がし辛くなる」、「売却し辛くなる」といったデメリットが潜在しています。
法定相続持分(共有名義)のままの放置は、問題の先送りに過ぎないので、換価分割や現物分割等によって共有を回避するようにしてください。
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