周知の埋蔵文化財包蔵地内にある土地を売却するときに知っていて欲しいこと!契約キャンセルのトラブル事例
周知の埋蔵文化財包蔵地内にある土地は売れるのでしょうか?
試掘調査と発掘調査って何ですか?
調査の結果、遺跡が出たら、調査費用は誰が負担するのですか?
それ以前に、自分の所有地が埋蔵文化財包蔵地内に位置しているのかも分からない!
そもそも、周知の埋蔵文化財包蔵地って何ですか?
そして、誰に聞けば分かるのですか?
今日は、周知の埋蔵文化財包蔵地内の土地を売却するときに、知っていて欲しいことについて書きたいと思います。
最近、実際に起きた事例を参考にしながら、書いていきます。
まず「埋蔵文化財包蔵地」とは?
埋蔵文化財包蔵地とは、住居跡などの「遺構」、土器や石器、貝塚や古墳などの「遺物」といった文化財が埋もれている土地(遺跡)のことを指します。
文化財は、一般的には「遺跡」と呼ばれているものです。
周知の埋蔵文化財包蔵地(埋蔵文化財の存在が知られている土地)は、全国に約46万箇所も有って、毎年9千件程度の発掘調査が行われています。
埋蔵文化財包蔵地は、地中に文化財が埋蔵されている土地とその周囲の土地のことで、既に遺跡などが発掘されたエリアの周辺地であり、遺跡や埋蔵物が発掘される可能性が高い場所のことです。
埋蔵文化財包蔵地に指定された区域は、既に埋蔵文化財が発掘された実績のある地であることから「周知の埋蔵文化財包蔵地」として、市町村の教育委員会などで遺跡地図としてその範囲を知らしめています。
埋蔵文化財の対象は、石器時代から江戸時代にかけてであるために、全国の都道府県にくまなく指定された地域が散らばっています。
以上のことからも、意外に多いことが分かっていただけると思います。そして、 こうした周知の埋蔵文化財包蔵地は、普通の土地のように売買ができるわけではないのです。
埋蔵文化財包蔵地で工事をする際の手続とは?
埋蔵文化財包蔵地で住宅の建築や開発工事などを行う場合は、文化財保護法の規定によって、工事着工の60日前までに埋蔵文化財発掘の届出を行う必要があります。
埋蔵文化財発掘の届出後は、工事場所及び工事範囲、建物基礎構造から調査方法を判断したうえで届出者に通知します。
事前の調査で、遺跡が残っていないこと、あるいは工事が埋蔵文化財に影響しないことが分かれば、特に問題はありません。
しかし、建築工事によって現存する遺跡が壊されるような場合は、少し厄介です。
それぞれの状況に応じて次の4種類の調査方法になります。
1.慎重工事
遺跡への影響がほとんどないと判断された場合は、慎重に工事をするよう指示されます
2.立会調査
小規模な工事は、掘削の際に調査員が立ち会います。
調査によって影響がないと判断されれば、ただちに工事着工ができます
3.試掘調査
遺跡の有無や残存状況を確認して、発掘調査の範囲を決定し、調査に要する期間や費用を算定するために行う調査です
4.発掘調査
試掘調査の結果から、工事を進めると遺跡が破壊されると判断された場合に実施します
埋蔵文化財包蔵地に影響のある範囲をすべて発掘調査します
埋蔵文化財包蔵地内での建築工事着工時に起こるかもしれないリスクとは?
売買対象物件が、周知の埋蔵文化財包蔵地にあれば、重要事項説明書のその他の法令の制限一覧で「文化財保護法」にチェックマークが入ります。
しかし、ただチェックを入れるだけでは、後々トラブルに発展する可能性がありますので、建築工事着工時に起こるかもしれないリスクを、買主に十分に説明しなければなりません。
埋蔵文化財包蔵地で建築工事をする場合に起こるかもしれないリスクとは?
1.工事着工が大幅に遅れる
試掘調査の結果、本格的に発掘調査を行うことになれば、3カ月~1年程度は、工事に着工することができなくなります。
2.発掘費用の負担が発生する
発掘調査の費用は土地所有者が負担します。
ただし予定建築物が個人住宅であれば、国からの補助金が出るので影響はありません。
しかし建築予定物がマンションなどの事業用であると、補助対象にならないため、土地所有者が負担することになります。しかし、その費用は1㎡あたり何万円とは一概に言えないのです。調査の範囲や遺跡の種類によって大きく差が出るからです。
3.地盤改良が行えない
土地が軟弱地盤であっても、埋蔵文化財包蔵地だと通常実施する地盤改良が行えないことがあります。この場合、擁壁を築造して盛り土をしたり、建物の規模を縮小したり、建物の位置を変更することになります。
実際に起きた契約キャンセルのトラブル事例!
つい最近に起きたトラブル事例です。
当社は、買主様担当、売主様は、別の不動産業者が担当しています。
ご案内した中古の一戸建てを気に入られた買主様・・・・
売主側の不動産業者に、案内立会時にも確認したのですが、購入申込みをいただく前にも再度確認したのが、
「これを事前に聞いていたら購入しなかった」と言う内容は無いですか?
「特に無いです!」との回答でしたので、購入申込みをいただき、その後、価格交渉や引渡時期の商談を行い、契約日時まで確定するに至りました。
事前に、重要事項説明書と契約書を買主様に説明したいので、作成を依頼したところ
送られてきた重要事項説明書には「文化財保護法」の記載が有り、当該物件に受ける制限の概要として、「掘削工事(建築・擁壁・造成など)行われる場合は、工事着工60日前までに発掘届を提出しなければなりません。」としか記されておらず、
試掘調査に際して、行政からの補助が受けられるかどうか、過去の近隣調査で重要な史跡などの発掘があったかどうかの記載もありませんでした。
当該物件は開発団地の一区画なので、過去の調査結果はどうなっているのかを質問しましたが、売主担当業者は、「会社としてそこまで調査することはしていません」との回答。
当社が調査した結果、当該開発地における調査記録は無かったものの、近隣30mの箇所での調査記録があり、その内容から文化財課の担当者より、遺構が発見される可能性は極めて低くく、試掘調査になったとしても、その費用は行政が負担するとの見解をいただき、買主様に説明しました。
しかし、物件案内時に、その説明を受けていれば納得もできていたのに、契約が確定してからの後付け説明になったことと、他にも説明を受けていなかった事項があったために、購入意欲が薄れてしまい、契約はキャンセルになってしまいました。
事前に詳しく調査を行い、物件案内時に説明を受けていたら、ご契約に至っていたのに、売主様にとっては、売却できた好機を失うことになってしまった事例です。
埋蔵文化財包蔵地でトラブルなく売却するためには!
埋蔵文化財包蔵地内の物件は、工事着工前に試掘調査や発掘調査が行われるリスクがあるので、そうでない土地と比べるとスムーズに売却できないことがあります。
また、スムーズに売却できたとしても、買主に埋蔵文化財包蔵地であることに対する正しい認識がないとトラブルに発展してしまいます。
ここでは、埋蔵文化財包蔵地の物件をトラブルなく売却する方法を書きます。
1.物件の案内(内覧)時に、予め説明をする
下記の2.3.の項目を物件案内時に予め説明することです。
周知の埋蔵文化財包蔵地内の物件であることを、契約日時が確定して後にに知らされると、購入意欲が一気に下がります。
せっかく気に入った物件に巡り合い、購入意欲が高まったのに、商談がまとまった後に知らされると、売主様にとっても売却の好機を逃すことになります。
2.重要事項説明では分かりやすく説明をする
埋蔵文化財包蔵地の物件は、重要事項説明書で「文化財保護法」にチェックマークを入れますが、これだけだと、ほとんどの人が何のことか理解できません。
埋蔵文化財包蔵地での建築工事には、どのような事態が想定されるのかを、詳しく丁寧に説明することです。
また、発掘調査によって建築工事の着工が伸びるといったマイナス情報とともに、個人住宅の場合は、行政から補助金が出ることを説明すれば、買主の安心材料にもなります。
3.現況の建物が建った経緯を調べる
地域によって時期は異なりますが、概ね1970年以降に建った建物であれば、建築確認済証に文化財課の意見書が添付されていることがあります。
現況の建物の工事着工前に、文化財に対する何らかの判断を下した経緯があれば、今回改めて本格的な発掘調査を行う可能性は低くくなると思います。
いずれにしても、売却活動開始前には調査が完了していることが最低条件です。
まとめてみました!
埋蔵文化財包蔵地内での建築工事が、必ずしも発掘調査を行うとは限りません。
市町村の文化財課では、埋蔵文化財包蔵地域内の位置や建物規模によって、どんな調査を行うかは、ある程度の見解をもっています。
その中には、明らかに「慎重工事」の指示のみが出される場所もありますので、あまり悲観的になる必要はないと思います。
一般的には、埋蔵文化財包蔵地内の物件を売買するときには、査定価格を提示する前に調査を行い、当該地には、どのような指示が出されるのか、当該物件や近隣での調査記録は残っていないのか、文化財課の担当者から聞き取りをして、発掘調査の可能性を相談します。
この調査を、当り前にしてくれる不動産会社を選ぶことが、埋蔵文化財包蔵地内の物件をトラブルなく売却を進める有力な方法だと思います!
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