マイホームを売却したときの、譲渡所得の計算方法と、減税するための特例について
不動産を売却すると、利益が発生することがあります。この利益のことを「譲渡所得」といいます。譲渡所得に対しては「所得税」が課税され、翌年には「住民税」も納税しなければなりません。
今日は、「譲渡所得とは?」「その計算方法は?」「減税方法は?」について書きたいと思います。この内容は、お客様からも良く質問をいただきますので、是非お読みください!
不動産の売却には、税金の知識が必要ですので、広く浅く理解していただくことをおすすめします。
不動産売却における譲渡所得とは?
譲渡所得は、土地や建物など、不動産を売却したときに発生する利益(所得)のことです。また、発生した利益に対して課される税金のことを「譲渡所得税」といいます。
「譲渡所得税」は、売却の対象となる不動産が、営業(利益)目的ではないマイホームの売却でも、利益が発生すれば、確定申告で納税しなければならないのです。
譲渡所得は、次のような式で計算します。
◆譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
計算式に出てくる「譲渡価格、取得費、譲渡費用」について詳しく見ていきましょう。
◆譲渡価格は、不動産を売った価格のことです。
◆取得費は、「不動産を購入した費用」と思っている人が多いのですが、建物については「減価償却費」を差し引いた金額のことをいいます。
減価償却費とは「モノの劣化」を表しています。
不動産のうち建物は「時間の経過とともに価値が減少していく」ものと考えられるので、譲渡所得の計算の際には、減価償却費を考慮する必要性があるのです。
そして、取得費の計算方法は「実額法」と「概算法」のどちらかによって求められます。
実額法・・・・取得費=取得にかかった費用の合計額-減価償却費
概算法・・・・取得費=譲渡価格(売却価格)×5%
売却する全ての不動産の取得費が判明するわけではなく、不明な場合もあります。この場合に、譲渡価格に「5%」を乗じて取得費とする概算法が適用されます。
◆譲渡費用は、不動産を譲渡(売却)するためにかかった費用のことで、登記費用や収入印紙代、仲介手数料や測量費用などが該当します。
譲渡所得の税率は、売却する不動産の「所有期間」によって異なります
譲渡所得にかかる税率は、その不動産を「所有した期間」によって異なります。
税率は、「売却した年の1月1日時点」で、
所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、
所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」が適用されます。
税率は以下の通りです。
◆長期譲渡所得:(所得税)15.315%+(住民税)5%=20.315%
◆短期譲渡所得:(所得税)30.63%+(住民税)=30.63%
所有期間ごとに税率が異なる理由は、「地価の安定」や「供給促進」などの目的があるからです。
所有期間の短い不動産の売却は、投機的取引を抑制するために税率を高めに設定し、所有期間が長い場合は、供給促進へのためとして税率を低めに設定しています。
譲渡所得税を減税するための特例は、以下の三つです
譲渡益の大きい不動産の売却は、自ずと税額も大きくなります。少しでも税負担を軽減させるために、不動産売却では以下のような「譲渡所得税減税特例」が設けられています。
①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
②マイホームを売ったときの軽減税率の特例
③特定のマイホームを買い換えたときの特例
三つの「譲渡所得税を減税するための特例」については、、次回のブログで詳しく書きたいと思いますが、大まかな内容は以下とおりです。
①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
一定の要件を満たすことで、居住用不動産(マイホーム)を売却したときに、所有期間に関わらず、譲渡所得から最高3,000万円の特別控除を受けることができる特例です。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けるためには、次のような要件を満たす必要があります。
◆売主が居住していた不動産であること
◆売主と買主の関係性が、親子や夫婦などの特別なものではないこと
◆売った年の前年、及び前々年に、「この特例」や「譲渡損失の特例」などを受けていないこと・・・等
②マイホームを売ったときの軽減税率の特例
不動産の所有期間が「10年以上」の場合のみ、通常よりも税率が軽減されます。また、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と併用して利用することも認められています。
「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
◆売却する居住用不動産の所有期間が10年以上であること・・・等
③特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを売却して、新しいマイホームを購入したときに、受けることができる特例です。
この特例を適用するためには、いくつかの要件を満たす必要があり、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」との併用利用はできません。
「特定のマイホームを買い換えたときの特例」を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
◆売却する不動産の所有期間が10年以上であること
◆売却価格が1億円以下であること
◆購入する不動産の床面積が50㎡以上であること
◆売った年、その前年、及び前々年に「マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」などの特例を受けていないこと・・等
具体的な譲渡所得税の計算例
マイホームの売却を例にして、具体的な譲渡所得税の計算を確認していきましょう。
◆売却価格:4,000万円
◆取得費:不明
◆譲渡費用:250万円
◆所有期間:9年
この場合の、取得費、譲渡所得、そして譲渡所得税はどうなるでしょうか?
◆取得費:この例はで、取得費が不明になっていますので、実額法ではなく「概算法」で求めることになります。
売却価格4,000万円 × 5%=取得費200万円となります。
◆譲渡所得:この例はマイホームの売却ですので「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は適用されますが、所有期間が10年を超えていないので、「軽減税率の特例」「買換えの特例」は適用することはできません。
4,000万円-(200万円 +250万円))– 3,000万円=譲渡所得550万円になります。
◆税率:所有期間9年ですので、「長期譲渡所得の税率」が適用されます。
よって、
所得税は、550万円 × 20.315% =842,325円、
翌年の住民税は、550万円×5%=275,000円、
合計で、1,117,325円になります。
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