土地の筆界(境界)トラブルを解決! 裁判よりも早くて安い「筆界特定制度」とは?!
お隣さんと筆界(境界)でもめた場合、
今までは、その解決手段としては裁判(境界確定訴訟)しかありませんでした。
そして、裁判を行うと費用は高額になり、結論が出るまでに2年から3年という相当な時間がかかっていました。
今すぐ売却しなければならない人にとってこの時間は長すぎます。
そこで、新たに導入されたのが、
平成18年(2006年)に不動産登記法の改正による「筆界特定制度」です。
これは、境界トラブルを迅速に解決するために設けられた制度です。
筆界特定制度とは?!
法務局の「筆界特定登記官」が、外部の専門家である「筆界調査委員」の意見を踏まえて、現地で土地の筆界位置を特定する制度です。
「筆界特定制度」は、平均して6ヵ月〜1年くらいで一応の結論が出るように努力するとされているので、裁判よりも早く結論が出て、費用負担も裁判に比べて少なくて済みます。
ただし、各法務局によって処理期間が異なります。
土地の境界は「筆界」と「所有権界」の二つが有ります!
一般的には、「筆界」と「所有権界」は一致していて当り前のものなのです。
「筆界」とは、登記上定められて土地の範囲のことで、その土地の範囲を区分するものとして定められた線のことです。
「所有権界」は、お隣さん同士で「ここからここまでが私の所有だ」と主張する境のことです。
もともと、「筆界」は「所有権界」の合意のもと決められた境界ですので、本来は一致していて当り前なのですが、その後、所有権界の変更が合意されても筆界を変更しなかったことで、不一致が生じているのです。
これが境界トラブルの最大の原因なのです。
●筆界と所有権界の不一致で起きるトラブルについてはこちらもご覧ください。
また、筆界の変更は、所有権界の変更の合意だけではできない、ということも付け加えておきます。
ここで、筆界特定制度について、もう少し説明します
その土地が登記されたときに、その範囲を特定するものとして定められた線「筆界」を、現地で探し出すのが「筆界特定制度」です。
これは新たに筆界を定めるものではなく、調査の上、登記されたときに、もともと定められていた筆界を筆界特定登記官が明らかにすることなのです。
ですから、筆界特定制度は、その土地の所有権がどこまであるのかを特定するものではないので、特定の結果に納得できないときは、境界確定訴訟として裁判で争うこともできます。
しかし、筆界調査委員の専門的な調査結果に基づいて特定された筆界は、その信頼性が高いので、その後の訴訟で変更される可能性は少ないと言われています。
少ないということは、変更された判例もあるということです。
筆界は、どのようにして特定するのでしょうか?
土地家屋調査士や弁護士、司法書士など、民間の専門家からなる「筆界調査委員」が、補助する法務局職員とともに、土地の現地調査や測量など、さまざまな調査を行ない、筆界に関する意見を「筆界特定登記官」に提出し、「筆界特定登記官」が、その意見を踏まえて筆界を特定します。
筆界特定制度の申請は、どのようにするのでしょうか?
土地の所有者として登記されている人や、その相続人が、対象となる土地の所在地を管轄する「法務局」または「地方法務局」の筆界特定登記官に対して、筆界特定の申請をします。
申請書に必要な事項を記載し、添付書類とともに提出します。
共有名義の場合、共有者の一人から単独で申請することもできます。
この場合、申請人以外の共有者は関係人という立場なり、手続きにおける意見や、資料の提出ができ、現地調査や測量を行うときには立会うことができるなどの一定の保障が与えられます。
筆界特定制度の申請手数料はどれくらい必要ですか?
申請手数料は、申請対象地とその隣接地の「固定資産課税台帳」に登録された土地の評価額の合計によって決まります。
①申請手数料は筆界特定の申請時に納付するもので、申請人の負担になります。
②手数料として納付する額は、固定資産課税台帳に登録された土地の価格に基づいて算出されます。
③例えば、2筆の土地の筆界を特定する申請では、まず基礎となる額を次のように求めます。
④申請地の土地の価格と、隣接地の土地の価格を加えて2で割り、それに法務省令で定める割合0.05を乗じて得られた額が、算定の基礎となる額になります。
⑤その基礎額に応じて、次表により算出した額が申請手数料となります。
例えば、申請した人の土地と、そのお隣さんの土地価格の合計額が5,000万円である場合の申請手数料は9,600円です。
手数料以外にも、筆界調査で測量が必要となるときは、その費用が必要です。一般的に測量費用は数十万円程度です。(申請手数料と合計しても裁判に比べて費用負担は少なく済みます)
また、手続きの代理として、土地家屋調査士・弁護士・司法書士に依頼した場合、その費用もかかります。
相手が一切協力してくれない場合はどうなるのですか?
筆界特定を申請した場合、相手方に法務局から「筆界特定の申請がされた旨」の通知が届きます。
筆界特定の調査は、申請人や相手方に立ち会う機会を与えなければならないとされています。(不動産登記法第136条第1項)
立会することは、対象土地の測量や現地調査では、筆界特定のために最も重要なことなので、申請人等に対する手続保障(手続きが適法でなければならないこと)を図ったものです。
申請人等が立ち会った場合には、正確な測量を行う前提として、特定すべき筆界を構成する可能性のある点の位置(主張の位置)を確認します。
また、お互いに紛争に至った経緯や、対象土地の過去から現在に至るまでの使用状況、主張する筆界の理由、および、その他筆界特定をするに当たっての参考となるべき情報を聴取します。
もし、仮に相手方が立ち会わなかったとしても、測量または現地調査は行います。
筆界が特定されると登記記録に記録されます!
筆界が特定されると、対象土地の表題部に
「令和○年○月○日筆界特定(手続番号平成○年○月○日第○号)」と記録されます。
これは、登記記録を閲覧すれば、対象の土地について筆界特定がされた事実を把握でき、参照すべき筆界特定手続記録を知ることができるようにするためです。
仮に、土地Aから土地Bを分筆する場合でも、土地Aの登記記録に筆界特定がされた旨の記録があるときは、分筆された土地Bの登記記録にもその旨が登記されます。
逆に、合筆する場合でも登記記録に記録されます。
まとめてみました!
●筆界特定制度とは、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。
●筆界特定とは、新たに筆界を決めることではなく、実地調査や測量を含む様々な調査を行った上で、もともとあった筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。
●筆界特定制度を活用することによって、公的な判断として筆界を明らかにできるので、隣人同士で裁判をしなくても、筆界をめぐる問題の解決を図ることができます。
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