筆界特定制度で全ての筆界(境界)トラブルが解決できるわけではないのです!
以前のブログで、筆界(公法上の境界)と所有権界(私法上の境界)が一致しないことで起きる「土地の境界トラブル」について書きました。
土地の境界である「筆界」と「所有権界」が一致しないことで起きる境界トラブルが発生したときは、まずはこの2つの境界の違いを理解し、有効な解決方法を選択することが重要です。
そこで今日は、境界トラブルを解決する「筆界確定訴訟」と「筆界特定制度」について書いてみたいと思います。
ただし、筆界特定制度で全ての筆界(境界)トラブルが解決できるわけではないのです!
筆、加古川の不動産売買専門店 未来家不動産株式会社 代表 清水浩治
まずは土地家屋調査士にご相談することをお勧めします!
現在、あなたが直面している境界トラブルが、「筆界」に関する問題なのか、「筆界・所有権界」の両方に関係した問題なのかによって、解決へ向けての手段が変わってきます。
「筆界」と「所有権界」ともに、
まずは、境界・測量・登記の専門家である「土地家屋調査士」に相談し、最善の解決策を模索することをおすすめします。
ただし、「所有権界」についての問題は私的内容が多く、占有や取得時効のように法律的な判断が必要な場合がありますので、その場合は土地家屋調査士だけでなく、
法律の専門家である「弁護士」への相談が必要になるでしょう。
「筆界」と「所有権界」の関係
「筆界」と「所有権界」は、それぞれ「境界」を意味していますが、それぞれ別の概念を持ちながら、互いに密接に関係し合ってい、もともと、その位置は一致していました。
ですから、この2つが一致しないことで起こる境界トラブルは、どちらかひとつだけの問題を解決すれば、それで良し、というものではないのです。
将来のトラブルを避けるためにも、筆界(公法上の境界)と所有権界(私法上の境界)は一致させておくべきものなのです。
そのためには、隣地所有者との立会のうえ、確定測量図を作成して、それが、法務局の公図・地積測量図と一致しない場合は、一致させる申請をすることをお勧めします。
そうすることで、将来、所有権界に疑義が生じたとしても、確定測量のデータ(座標値)で境界を復元することができますので、トラブルに発展することがなくなります。
筆界(公法上の境界)に関する紛争解決、筆界確定訴訟
境界トラブルが起きると、その土地を管轄する地方裁判所に提訴します。
裁判が始まり判決が出るまで約2年程度かかります。
ただし、通常の裁判では和解ができますが、「公法上の境界」である「筆界」については、私人同士の話し合いや合意では変更できないので、原告と被告が和解したとしても無効になります。
「筆界」は判決によって必ず確定され、一度判決が出ると、それ以降は争いの申立てができません。
筆界確定の判決は、あくまでも「公法上の境界」である「筆界」についての判決であり、「所有権界」に関する判決ではないことを知っていてください。
そして、筆界確定訴訟には、いくつかの問題点があります。
弁護士費用など通常の裁判費用以外にも、裁判資料を土地家屋調査士に依頼する際の費用が必要です。
また、弁護士や裁判官が必ずしも境界問題に詳しいとは限らず、裁判所の決定に矛盾が生じることもあるようです。
原告・被告という立場から、判決後の相隣関係が悪化する可能性もあり、せっかく筆界が確定しても、所有権界の争いが残ることになるので、裁判をするかどうかは慎重な判断が必要になります。
筆界特定制度は「公法上の境界」である「筆界」を特定するものです!
平成17年に不動産登記法が改正されて新設された「筆界特定制度」は「筆界確定訴訟」に比べると費用や時間もかけずに済みます。
土地の所有者から管轄の法務局に申請すると、民間から選ばれた土地家屋調査士や弁護士などの「筆界調査委員」からの測量調査報告や意見を踏まえて、法務局の「筆界特定登記官」が筆界を特定します。
申請から特定までの時間も半年から1年程度で済みます。
ただし、「筆界特定制度」は、登記官によって一方的に筆界が特定されますので、不服があったとしても認めてもらえません。
既に「筆界確定訴訟」で判決が出ている場合には、「筆界特定制度」は利用できませんし、「筆界特定制度」を利用した後に「筆界確定訴訟」を起こすと、判決が優先されます。
また、「筆界確定訴訟」の判決と同じく、登記官によって筆界が特定されても、それは「所有権界」を確定したことにはならないことを知っていてください。
所有権界(私法上の境界)に関する紛争解決、境界(所有権界)確認訴訟
境界(所有権界)確認訴訟は、所有権の範囲がどこまでなのかを争う裁判で、占有による取得時効などについても審理されます。
裁判なので判決はでますが、「私法上の境界」である「境界確定訴訟」は「公法上の境界」である「筆界確定訴訟」とは違って、原告と被告による和解もできます。
判決や和解によって所有権界については明確になりますが、同時に筆界が確定して公図の訂正ができるわけではありません。
所有権界と筆界を一致させることが、後のトラブル再発を防止する最善策ですので、裁判が終わって所有権界が確定したら、併せて、法務局の公図や地積測量図も訂正しておくことをおすすめします。
公図や地積測量図の訂正のためには、当事者および隣地所有者との立会いと協力のもと、確定測量図を作成し、法務局に申請しなければなりません。
土地家屋調査士会ADR(Alternative Dispute Resolution)制度
ADRとは(Alternative Dispute Resolution)裁判外紛争解決手続きの略です。
調停というかたちで仲裁人を立てて、当事者同士が話し合いで問題を解決しますので、裁判に比べて費用や時間がかからず、当事者同士の感情的なしこりも残りにくいのが特徴です。
ADRを利用するには、申立人だけでなく、申立てられた相手方の両方が調停に参加する必要があり、調停にかかる費用は両者で分担します。
境界に関する専門家である「土地家屋調査士」と法律の専門家である「弁護士」が共同して仲裁にあたるので、「所有権界」と「筆界」の両面から問題解決にアプローチすることができるのです。
「所有権界」に関する合意ができたら、その内容を確定測量図に反映させ、法務局に申請することで、「所有権界」と「筆界」を一致させることがでるのです。
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