不動産を共有名義で所有する「メリットとデメリット」思わぬところにトラブルの種が!
夫婦でマイホームの購入を検討しているお客様から良くいただく質問です。
「2人で買うなら共有名義にした方がいいですか?」
「共有名義にしたいけど持分の決め方が分かりません!」
「夫婦で購入するなら持ち分は2分の1ずつでいいですか?」
物事には全てメリットとデメリットがあると言われています。
もちろん、共有名義・共有持分にもメリットとデメリットがあり、思わぬところにトラブルの種が潜んでいるのです。
それでは、詳しく書いていきたいと思います。
共有名義と共有持分とは?
不動産を購入したら、所有権移転の登記をします。
この所有権を持つ人が複数人いる状態を「共有名義」といい、それぞれの所有権の割合を「共有持分」といいます。
持分半分ずつ夫婦2人で家を購入した場合、登記簿には、共有者として夫婦それぞれの名義と、名義の前頭に持分割合の2分の1が記載されます。
では、持分割合はどのように決めるのでしょうか?
分かりやすく言うと、不動産を購入費用に対するそれぞれの出資比率で決めて行きます。単純に「夫婦2人で購入するから、持ち分は2分の1ずつ」と言うわけではないのです。
ちなみに不動産購入費用(取得費)にとして、認められるもの、認められないものがありますので注意してください。
取得費になるもの
◆土地建物の購入代金 ◆新築の場合は建設費用 ◆リフォーム費用 ◆古家を解体して新築する場合の解体撤去費用
◆登記費用 ◆印紙代 ◆不動産取得税 ◆仲介手数料
などが取得費に含まれます。
取得費にならないもの
◆引っ越し代金 ◆家具家電の購入費 ◆火災保険料 などは生活にかかるものなので取得費には含まれません。
◆住宅ローンローン保証料 ◆団体信用生命保険料 ◆金利なども対象外です。
不動産の売買では大きなお金が動くので混同しがちですが、注意してください。
詳しくは、担当してくれる不動産会社の担当者に確認してください。
共有名義・共有持分のメリット
夫婦や親子など、共有名義で家を購入した場合、どのようなメリット有るでしょうか?
ここで注意が必要なのは、購入当初はメリットでも、ライフスタイルの変化によってデメリットに変わることも有る、と言うことです。
事前に知っておいて欲しいと思います。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除とは、当初10年間は年末のローン残高の1%が所得税から控除され、11年目~13年目は、3年間かけて建物価格の2%を所得税から差し引いてくれる制度です。
対象となるのは所得税と住民税で、ペアローンで夫婦それぞれが住宅ローンを組んでいれば、それぞれが利用できるので減税効果は大きくなります。
気をつけたいのは、夫婦のどちらかが仕事をやめて扶養家族になった場合は控除は受けられません。
共有名義にするときには、この先13年間働き続けるかどうかも考えてください。
◆住宅ローン控除については下記をご覧ください。
居住用財産の3,000万円特別控除
不動産売却時の優遇として「居住用財産の3,000万円特別控除」という制度があります。
不動産を売却して出た利益(譲渡所得)のうち、3,000万円を控除するという制度です。3,000万円の利益であらば譲渡所得税はゼロになります。
共有名義の場合はそれぞれに適用されるので、
もし夫婦で共有している不動産なら、6,000万円まで控除される計算になります。
ただし、住宅を共有名義にするメリットとしては現実的ではないでしょう。バブル期のように地価が高騰する以外に、一般住宅でそれほどの譲渡益が出ることは考えにくいからです。
共有名義・共有持分のデメリット
あくまでも私の主観ですが、始めから「共有名義で購入したい」と考えている人よりも、資金計画上、共有名義で購入せざるを得ない、という人の方が多いように感じています。
ですから、共有名義に関するメリットよりもデメリットについての質問の方が多いようにも感じています。
では、デメリットについて十分に理解していただきたいと思います。
共有者全員の承諾がないと売却できない
共有であっても、あなた自身の共有持分についてのみなら売却や抵当権設定などは自由に行うことができるのですが、不動産全体を売却する場合は、共有者全員の承諾が必要になります。
共有者間の共有物の使用を制限する結果を招く行為には、共有者全員の承諾が必要になりる、と言うことです。(民法第251条)
共有持分を売りことができても、不動産の場合、部分的に売却するということはできませんので、全員の意思がそろわないと売却はむずかしくなります。
相続発生時に共有名義人が増えます
共有名義人の誰かが他界された場合、その人の共有持分は相続の対象となります。
他界された人の相続人が、あなた一人であれば、その持分はあなたのものになりますが、その不動産は、あなただけのものになりますが、
もし、相続人が複数いらっしゃる場合は、あなたの不動産は遺産分割の対象となり、共有名義人が増えることになります。
その場合、売却が必要な場合は、共有者全員の同意が必要になるなど、処分が難しくなるでしょう。
住宅ローンの返済が贈与税の対象になることも!
住宅ローン控除を夫婦2人とも利用したいのでペアローンを申込みました。
しかし、返済中に夫婦のどちらが仕事を辞め収入が無くなった場合に、その人の返済分を収入のある人が負担することになると、これが贈与とみなされて、贈与税が課税される可能性があるのです。
共有名義でよく相談があるトラブル
共有名義で所有する不動産は、相続による売却や離婚のときにトラブルになりやすいようです。
それぞれのトラブルの代表的な内容についてご紹介します。
代表的なトラブルですので、相続したから、離婚するから、そのときに必ず起こるトラブルではないのでご了承ください。
相続時のトラブル
親が亡くなり、兄弟3人で実家を相続し登記も完了しました。
しかし誰も住まない実家は手入れも管理もされないまま老朽化が進むばかりです。
所有しているだけで固定資産税や都市計画税が課税せれるので、長男は次男と三男に、「実家を売却して、売ったお金を3人で分配しよう」と提案しました。
ところが次男は「思い出のある実家を手放したくない」と反対。
三男は「実家は売りたくないがお金が必要なので自分の持分を買い取って欲しい」と言います。
兄弟の意見がそろわないため、なかなか売却できないと言う内容です。
離婚時のトラブル
共有名義のマンションを購入した夫婦が、離婚することになりました。
ご主人は職場も近く気に入っているので住み続けたいが、二人の収入を合算して住宅ローンを借りたので、ひとりで返済するのは難しい。
また、奥様の持分を買い取る資金もないので、やむを得ず売却するしかありません。
また、複数の共有名義人のうち一人が行方不明になっている場合などは、売却には全員の承諾が必要になるので、一人でも同意が得られなければ売却ができません。
この場合、まずは行方がわからない共有名義人を捜すことになりますが、捜しても見つからない場合は、裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、売却の許可を得るといった複雑な手続きが必要になります。
まとめてみました!
資金を出し合ったり収入を合算すれば、一人で購入するよりもランクの高い不動産を購入できるかもしれません。
また、共有名義で所有することで税金面の優遇もあり、メリットが大きいように見えます。
しかし、安易に共有にしたために、親族間でもめたり、思いがけない出費や煩わしい手続きなどのトラブルにつながることもあります。
マイホームは一生に一度とも言える高額な買い物ですので、共有名義でお金を出し合い、いい物件を、と思うのは自然なことかもしれません。
しかしライフスタイルは変化していくものですので、将来、共有名義にしたことで後悔しないようにしっかりと考えて最善の選択ができるようにしてください。
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