不動産登記の基礎知識と不動産登記の不思議
不動産とは、土地と建物のことで、
不動産の登記とは、大切な財産である不動産について、その所在や面積などの物理的状況と、所有者や担保権などの権利関係を、法務局(登記所)が管理する登記簿(登記事項証明書)に記載することです。
そして、登記簿を一般に公開することで不動産取引の安全と円滑を図る制度のことです。
ただ、不思議に思われるかもしれませんが、不動産の登記には登記しなくてもいい登記が有るのです。
そこで今日は、不動産登記の基礎知識と、不動産登記の不思議について書いてみたいと思います。
不動産登記簿(登記事項証明書)の内容
不動産の登記簿には「土地登記簿」と「建物登記簿」の2種類があります。
そして、それぞれ登記簿は「表題部」と「権利部」に分かれています。
さらに権利部は「甲区」と「乙区」に分かれているのです。
つまり、登記簿は「表題部」「権利部甲区」「権利部乙区」の3部構成になっています。
それぞれの部分には以下の情報が記載されています。
◆土地の表題部:所在、地番、地目、地積(面積)
◆建物の表題部:所在地、家屋番号、種類、構造、床面積、建築年月
◆権利部(甲区):所有者に関する事項が記載されています。
所有者が誰で、いつどんな原因(売買、相続など)で所有権を取得したのか
ここには、所有権移転登記、仮登記、差押え登記、仮差押え登記、などが登記されます
◆権利部(乙区):所有権以外の権利に関する事項が記載されています
ここには、抵当権設定、地上権設定、賃借権設定、などが登記されます
不動産登記の必要性と不思議
不思議に思われるかもしれませんが、実は不動産登記の権利部「甲区・乙区」部分に関しては、登記の義務は無いのです。
法律的には「登記をするか、しないか」は個人の判断に任されています。
しかし、権利に関する登記は、不動産の権利関係を公示するためのもので、登記義務は無くても、登記することで第三者に対しての対抗力(登記した権利を主張できる力)が生まれるのです。
言い換えると、登記しなければ第三者に対し権利を主張することができない、と言うことです。
例えば、Aさんが、BさんとCさんの両方に同じ不動産を売ったとしても、先に売買契約を締結したことや、先に代金を払ったことは重要ではなく、BさんとCさんのどちらが先に所有権の移転を登記したのかが重要になるのです。
ここが不動産登記の不思議なところなのです!
ただし、表題部の登記(表題登記)は、義務付けられていて、不動産の取得や、不動産の物理的現況に変化が生じたときから1ヵ月以内に登記をしなければ10万円以下の過料が設けられています。
理由は、表題登記は固定資産税と連動しており、不動産の現況の変化を早急に把握、公示する必要があるからです。
では、次は不動産の登記の種類について書いてみたいと思います。
新築で必要な登記
◆建物表題登記(表示登記):
表示登記とは、建物の登記記録の表題部を新規に作成する登記です。
建築工事が完了して建物が完成すると、建物の所在、種類、家屋番号、構造、床面積などを特定する登記を申請します。
主に土地家屋調査士が表題登記を申請します。
建物の表題登記の登録免許税は非課税です。
◆所有権保存登記:
登記簿の甲区(所有権に関する登記)に初めてなされる所有権の登記です。
所有者の住所、氏名、新築年月(手続きをした日付)等が記載されます。
所有権保存登記を行うことで所有者は自分の所有権を主張することができるのです。
所有権保存登記は最初の所有者しか行わず、所有者が変わったときは所有権移転登記となります。
主に司法書士が所有権保存登記を申請しますが、自分で申請することも可能です。
売買・贈与・相続で必要な登記
◆所有権移転登記:
所有権移転登記は、不動産を売買、相続、贈与したとき、旧所有者から新所有者へ所有権が移転するときに行われます。この登記を行うことで、新所有者は第三者に対し所有権を主張することができるのです。
※相続登記は所有権移転登記の1つで、相続を原因とする所有権移転登記のことです。
住宅ローンで必要な登記
◆抵当権設定登記:
抵当権設定登記は、不動産(土地・建物)を担保に住宅ローンを借りるときに必要な登記です。抵当権設定登記は、住宅ローン借入実行日と同日に行います。
抵当権とは、住宅ローンの担保として、購入した不動産にローンを貸した金融機関が設定する権利で、金融機関は住宅ローンが返済されない場合に担保不動産を強制処分し優先して弁済を受けることが可能になります。
この権利を明確にするために行うのが抵当権設定登記で、金融機関を抵当権者、住宅ローン借入者を抵当権設定者と言います。
抵当権設定登記は司法書士に依頼して行うことが一般的です。
◆抵当権抹消登記:
家や土地を担保に借りたお金を完済したとき、抵当権を抹消するために行う登記です。住宅ローンを完済した場合に行われるのが一般的です。
その他の登記
◆土地分筆登記:
1つの土地を複数に分けるときなど、調査、測量を行い1筆の土地を2筆以上に分割する登記です。
◆土地合筆登記:
複数の土地を一つに合併するようなとき、調査、測量を行いの土地を1つに合併する登記です。
◆土地地目変更登記:
田んぼや畑、山林などであった場所に家を建てて宅地に変更したときなど、土地の用途を変更したときに行う登記です。
◆建物滅失登記:
建物が消失、または取り壊したときに行う登記です。
◆所有権登記名義人表示変更登記:
不動産を所有する名義人の住所が変わったり、結婚・離婚等をして氏名が変わった場合などに行う登記です。
まとめてみました!
今日は、不動産登記の基礎知識について書いてきました。
不思議に思われたかもしれませんが、不動産の登記には義務が無い登記も有るのです。
しかし、不動産の所有権を第三者に主張するためには、義務は無くても登記が必要であると言うことがお分かりいただけたと思います。
不動産を購入したときだけでなく、
相続や贈与によって取得したときも、所有権の登記をすることをお勧めします。
あなたの状況に合わせて不動産会社や司法書士等に相談してください。
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