不動産を相続するときの手続き「相続登記」と「相続税の申告」
相続の手続きは複雑で、初めての人には分からないことだらけだと思います。そして、相続する財産にはいろいろな種類がありますが、その代表的なのが不動産です。
そこで今日は、不動産を相続したときの相続登記と相続税の申告について書いてみたいと思います。
筆:加古川の不動産売買専門店、未来家不動産株式会社 代表取締役 清 水 浩 治
相続登記とは?
相続登記とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた不動産の名義を相続人(その不動産を受け取る人)に変更する登記のことです。
相続登記をすることで、登記簿上の不動産の所有者が相続人に変更(所有権移転)されます。
では、なぜ相続登記をするのでしょうか?
それは、相続不動産を将来売却する場合、名義が被相続人ままだと売却できないからです。また、名義変更(相続登記)をしないまま、相続人が亡くなったら、そのままにされている登記簿上の名義人(所有者)は2代前の人になってしまいます。
【被相続人】→【相続人①】→【相続人①の相続人】
このようなことが繰り返された後に、名義を現在の相続人に名義変更をするのは、大変な手間がかかることになるのです。
だからこそ、相続登記はその都度行うことが好ましいのです。
相続登記は義務化されていない
実は、相続登記を含めた所有権移転登記は事務化されていないのです。
そのため、相続した不動産について相続登記をせずに登記費用を節約しようと考える人が多いのも事実です。
ただ、相続登記をしないことで、空き家問題など、さまざまな弊害が少なくないことから、「相続登記の義務化」に向けた改正法案が法制審議会で審議され、臨時国会で法案が提出される見通しです。
施行日については未定ですが、相続登記は必ず行って欲しいと思います。
相続登記の流れ
相続登記をするためのおおまかな流れは、
◆不動産の情報を集める
◆戸籍関係の書類を集める
◆相続登記に必要書類を準備する
◆法務局へ申請する
不動産の情報収集は、登記簿謄本(登記事項証明書)で集めることができます。不動産の所在、土地や建物の面積、地目や構造、現在までの所有者の変動や権利関係などが明確に分かります。
また、固定資産税通知書や固定資産税評価証明書があれば、不動産の現在の価値を知ることができます。
登記簿謄本(登記事項証明書)や固定資産税関係の書類は簡単に入手できますので取り寄せてください。
戸籍関係や住民票関連の書類は、被相続人(亡くなった人)と相続人それぞれの分を用意しなければなりません。
相続の仕方によって必要となる人や人数も変わります。
相続の仕方
相続登記の手続きは、相続人がどのような仕方その不動産を相続するかで手続きに必要になる書類が変わってきます。
法務局で扱う登記申請書は、相続の仕方ごとにフォーマットがありますので、どの相続の仕方に該当するかを、あらかじめ確認しておきましょう。
◆公正証書遺言による相続
◆自筆証書遺言による相続
◆遺産分割協議による相続
◆数次相続が発生している場合
◆法定された割合による相続
相続税の申告がいらない相続
全ての相続で相続税の申告が必要なわけではありません。
遺産総額が相続税の基礎控除額以下の場合は
税金がかからないので手続きも不要になります。
◆基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出します。
相続税申告と納税期限
相続する財産が基礎控除額を超えていれば相続税の申告が必要になります。
そして、相続税の申告期限は、
相続開始を知った日(死亡日)の翌日から10ヵ月以内です。
この日付は申告書の提出だけでなく税金の支払い期日でもあります。
相続した不動産の価値(評価)
不動産を相続した場合はその価値を評価することが必要になります。
◆宅地の評価
宅地の評価は「路線価方式」で求めるのが一般的です。
路線価方式で求められる宅地の評価は、取り引き時価にもっとも近い「公示価格」のおよそ8割程度になると言われています。
個々の土地の立地状況や形態などもある程度考慮された評価です。
路線価(路線価方式)は、公表されていますので自分で計算することができますので、もし時間が許すのであれば、ご自身で計算してみることをお勧めします。
一般的な住宅用の宅地として使用されている土地では、相続人が被相続人と同居していた場合などでは、評価を下げる特例があります。
それは「小規模宅地等の評価減の特例」で、被相続人と一緒に住んでいた土地を相続したのであれば330㎡までは、その評価を80%減額するというものです。
◆家屋の評価
家屋の評価は固定資産税の評価額が基本になります。
評価額は時価の5割から6割程度になることが多いです。
相続税の申告手続き
不動産の評価額が基礎控除額を超えていたら申告手続きを行います。
「小規模宅地等の評価減の特例」による控除前の評価が基礎控除額を超えていた場合も申告が必要になります。
相続税の申告書は15種類あるのですが、その全ての記入が必要になるわけではありません。どの書類を記入するかは、相続した財産や利用する控除などで変わってきます。
添付書類は、
◆遺言の仕方に関するもの(遺言書、遺産分割協議書など)
◆不動産情報に関するもの(登記簿謄本(登記事項証明書)
◆固定資産税評価証明書、実測図など)
◆戸籍等に関するもの(戸籍謄本、印鑑証明書など)など、膨大になります。
国税庁のホームページに「相続税の申告のためのチェックシート」がありますので、ダウンロードして必要な書類を確認してください。
また、相続税申告書の提出先は、
被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署です。
自宅から離れている場合など、何度も足を運ぶのが難しいこともあるとは思いますが、これを変更することはできません。
相続税の税額 税率と控除額
まず、課税遺産総額を法定相続分で分割したものと想定して相続税の総額を計算します。
相続税は、課税遺産総額が多いほど税率が高くなる累進課税制度です。
もっとも少ない1,000万円以下で10%、
もっとも多い6億円超で55%(控除額7,200万円)が税率になります。
相続税の総額が出たら、これを各人の相続割合によりそれぞれの相続税額を計算します。
たとえば、相続税の総額が2,000万円で
相続割合が妻50%、長女30%、長男20%だった場合は
2,000万円をそれぞれの相続割合に応じて振り分けます。
この場合、妻が1,000万円、長女が600万円、長男が400万円です。
ここから、たとえば配偶者であれば配偶者控除があるので、
上記例のケースでは妻の1,000万円分はすべて控除され、
相続税はかからない、というように計算していきます。
相続登記にかかく登録免許税
相続登記にかかるのは、登録免許税です。
次の計算式によって税額を算出します。
◆登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
不動産が宅地と建物の場合はそれぞれ別に計算し、納税することになります。
相続登記を司法書士に依頼する場合は、別途、報酬が必要になります。
登記の専門家「司法書士」税金の専門家「税理士」に相談
相続登記も相続税申告も、専門知識が必要になるので、自分で全てを行うのはハードルの高いと思います。
そのため、登記の専門家である「司法書士」へ依頼する人も多いです。
その報酬は、8万円から12万円(税抜)が相場です。
相続税の申告は、税金の専門家である「税理士」への依頼が多くなります。
その費用には諸説ありますが、相続財産額の0.5~1%が目安になると思います。
いずれも手続きのみを行う目安です。
相続の場合、財産をどう配分するかで揉めることが多く、その調整には弁護士など別の専門家の係わりが必要なケースもあります。
専門家へ依頼する場合は、
相続財産の大きさや、関わる人の数、関係性なども考慮し、最適な依頼先に相談するようにしてください。
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