売買契約直前のキャンセルでも、損害賠償を請求されるかもしれません!
売却活動を始めたばかりの不動産に対して購入希望者から買付証明書が届きました。
そこに書かれている購入希望価格や引渡希望日は、私が想定していた内容より条件が悪く、売買契約希望日も3週間も先の日付になっていました。
この段階で不安は感じていたのですが、これもご縁と思い、買主との交渉を開始し、条件内容を整え双方とも合意のうえ売買契約日も確定し、その日を待つだけでした。
それが、契約直前になって、買主から契約キャンセルの申し出!
キャンセル理由は「親に反対されたから」????
買主は、「契約前のキャンセルはいつでもできる」と主張していますが、この場合、買主に損害賠償の請求はできるでしょうか?
売買契約直前のキャンセルでも、買主は損害賠償を請求されるかもしれません!
契約自由の原則 契約を締結するかしないのかは自由
契約自由の原則とは、人が社会生活を営むに際し結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のことです。
1.締結自由の原則:契約をするかしないかは当事者の自由、という原則
2.相手方自由の原則:契約の相手を誰にするのかは当事者の自由、という原則
3.内容自由の原則:契約内容をどのような内容にするかは当事者の自由、という原則
4.方法自由の原則:契約の方法は自由である、という原則
「契約が成立するであろう」という信頼関係は保護されるべきもの!「信義則上の義務」
しかし、交渉が進み契約条件がまとまってくると売主にも買主にも「契約が成立するであろう」という信頼関係が生れます。
その「信頼関係」は保護されるべきもので、
誠実に契約成立に努めるべき「信義則上の義務」が双方に生じます。
「契約前だから交渉を破棄しても問題はない」ということにはならないのです。
相手方の信頼を裏切り、契約交渉を破棄した者には、破棄によって相手方が損害を被れば、損害賠償の義務が生じるのです。
では、どのような段階に達すれば、交渉破棄による損害賠償が認められるのでしょうか。
この点については、個々の事案ごとに検討は必要ですが、測量や造成工事を行うなど、契約に向けての準備の有無、契約日の決定等が判断基準になります。
現行民法においては、交渉破棄に関する規定は無く、当事者は、契約の交渉を破棄したということだけでは、責任を問われることはないとしています。
そのため、契約締結前の中止で損害賠償が認められるケースは多くはありませんが、責任を肯定した判例もあるのです。
キャンセルするかもしれない原因を無くしてから買付証明書は提出してください!
とは言え、「いつでもキャンセルできるから、取り敢えず・・・・」といった感覚は避けるべきです。
真剣に考え、決断する前には、相談するべき人には必ず相談し、報告するべき人には必ず報告し、じっくり考えて、キャンセルするかもしれない原因は無くしてから、買付証明書は提出してください!
※こちらも参考にご覧ください。
購入を決断されるまでは、納得いくまで、じっくり時間をかけて! 契約日はできるだけ早く!
仲介業者や売主によっては、要らぬトラブルに巻き込まれることもあります。
また、売主様の気持ちを考えれば 「取り敢えず」 といった軽い気持ちで、買付証明書を書くべきものではないのです。
もちろん、急な転勤や勤務先の倒産等の「やむを得ない事情」があれば別ですが、契約日が確定すれば、相手方も仲介している不動産会社も、契約にむけての準備を始めていることを肝に銘じて欲しいと思います。
その労力と思いを知っていれば、キャンセルなど出来るはずがないのです。
ですから、キャンセルするかもしれない原因が残るのであれば買付証明書は書かないでください!
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