「手付金」の条項とは?不動産売買契約書
不動産(土地・建物・マンション)を売買する際の契約書には「手付金」という条項があります。
そこで今日は、「不動産売買契約書における手付金の条項とは?」について書いてみたいと思います。
契約書には、全宅連・FRK・全日・全住協、それぞれ独自のものがあり、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。
このブログでは、全宅連とFRKの条項を参考に説明したいと思います。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
手付金の条項
【全宅連の契約書】
第●条 手付
1.買主は売主に手付として、この契約締結と同時に標記の金額(B2)を支払う。
2.手付金は、残代金支払いのときに、売買代金の一部に充当する。
【FRKの契約書】
第●条 手付金
1.買主は売主に対し、表記手付金(以下「手付金」という)を本契約締結と同時に支払います。
2.売主、買主は、手付金を表記残代金(以下「残代金」という)支払いのときに、売買代金の一部に無利息にて充当します。
手付金の条項の趣旨 手付金は売買代金の一部ではない!
手付金の趣旨は、手付金の支払いに関する条項です。
第2項では、手付金を残代金支払いのときに、売買代金の一部に無利息で充当することを定めています。
売買契約の流れとしては、通常、買主から売主に、①手付金、②内金、③残代金と順次金銭が支払われていきます。
このうち、②内金、③残代金は、法律的には売買代金の支払いに当たります。
これに対し、①手付金は、手付契約に基づいて「確かに売買契約を締結しました」という証として支払われる金銭であって、売買契約締結時に支払う手付金は売買代金の一部ではないのです。
そこで、本条の第2項でわざわざ「残代金支払い時には売買代金の一部に無利息にて充当する」ことが定められているわけです。
手付金の意味
手付金の交付には、一般に、①証約手付、②解約手付、③違約手付、④損害賠償の予定という意味があります。
それぞれの契約においては、①~④の内いくつかの意味があるな のが普通ですが、最低限、①証約手付の性質を含んでいるといわれています。
また、民法第557条第1項では、②解約手付を原則とすることが定められていて、売買契約書においても、買主から売主に対して交付される手付金は、解約手付とすることが明記されています。
①証約手付 ②解約手付 ③違約手付 ④損害賠償の予定とは?
①証約手付/
契約の成立を証明するための証拠という趣旨で交付される手付
②解約手付/
当事者が契約の履行に着手するまでの間は解除権を留保し、解除したときは、買主は手付流し(手付の放棄)、売主は手付倍返し(手付金額の倍額を買主に返す)で清算するという趣旨で交付される手付
契約当事者は、債務不履行がなければ契約を解除できないのが一般原則です(民法第541条)が、解約手付の場合は、この事実がなくても契約解除ができます。
ただし、債務不履行による解除とは異なるので、損害賠償の問題は発生しません(民法第557条第2項)。
③違約手付/
当事者に債務不履行があったとき、違約罰として損害賠償とは別に当然に没収できる趣旨で交付される手付
④損害賠償の予定/
債務不履行があったときに、予定された損害賠償として、没収または倍額を支払う趣旨で交付される手付で交付される損害賠償の予定を兼ねる手付
※③と違うのは、④では損害賠償額が手付金の額に制限されるので、実損額が手付額を上回っても請求することができません
手付金の額には定めはありません!
手付金の額に制限はありません。
つまり、手付金の額が高額でも低額でも売買契約の成立に影響を与えることはありません。
裁判例にも、売買代金に比較して手付金額が極めて小さい金額でも、②解約手付とした事例があります。
それは、売買代金900円の売買契約について、6円の手付が解約手付た とした大審院(大正10年6月21日)の判決です。
しかし、低額な手付金で売買契約を締結すると、売主からは、手付倍返しによって契約を解除して第三者に売却することが容易になります。
また、買主も残代金か調達できなくなると判断したときには、違約金を取られるよりはましだと考えて低額の手付放棄することで契約を解除することが簡単にできてしまいます。
このように手付を低額にしてしまうと契約の効力を弱める結果になるので、手付を低額にしすぎることは、避けるべきだと思います。
ちなみに、売主が宅地建物取引業者で、買主が個人の場合、宅地建物取引業法により手付金の額は売買代金の20%が上限となります。
購入申込証拠金
不動産購入申込書を提出する際に、申込証拠金の支払いを求めてくる売主や不動産業者がいます。
申込証拠金は、買主の購人意思を確認し、その証拠として売主に預託される金銭です。
つまり、売買契約が成立したときは代金の一部に充当され、不成立のときはその時点で返還されるという趣旨の単なる預り金です。
ですから、申込証拠金は手付金の性格を有するものではありません。
関連した記事を読む
- 2024/10/28
- 2024/10/27
- 2024/10/26
- 2024/10/09