「境界の明示」の条項とは?不動産売買契約書
不動産(土地・建物・マンション)を売買する際の契約書には「境界の明示」という条項があります。
そこで今日は、「境界の明示の条項とは?不動産売買契約書」について書いてみたいと思います。
契約書には、全宅連・FRK・全日・全住協、それぞれ独自のものがあり、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。
このブログでは、全宅連とFRKの条項を参考に説明したいと思います。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
境界の明示の条項
【全宅連の契約書】
第●条 境界の明示
売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地において明示する。
【FRKの契約書】
第●条 境界の明示
売主は、買主に対し、残代金支払日までに、土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示します。
なお、境界標がないとき、売主は、買主に対し、その責任と負担において、新たに境界標を設置して境界を明示します。
ただし、国または地方公共団体が所有または管理する道路と土地との境界については、境界標の設置を省略することができます。
境界の明示の趣旨
境界明示の趣旨は、
通常、買主は不動産業者から対象物件の案内を受けた後に売買契約を締結します。
そして、売買契約締結後、残代金支払日までに、売主が現地にて境界標を指示して隣地との境界を明示してもらいます。
「明示する」とは「はっきりさせる」という意味です。
つまり、買主に「売買の対象物件は、ここからここまでがの範囲です」ということを認識してもらうことが、この条項の趣旨になります。
境界の明示を行うとは?
売主は、現地にて境界標を指示することにより境界を明示しなければなりません。
もし、境界標がないとき、売主は、測量の専門家である土地家屋調査士に依頼し新たに境界標を設置してもらうことが必要になります。
FRKの契約書では、隣地が、国または地方公共団体の所有または管理する道路であるときは、その立会いを省略して測量することができます、となっていますので、境界明示についても、境界標の設置を省略することができるものとしています。
ただし、境界標がないとき、 境界標の設置を省略することができるのであって、 境界の明示を省略することはできません。
国または地方公共団体が所有または管理する道路と土地との境界の明示は、現地にて、新たに作製された測量図により行うことになります。
境界トラブルの要因と回避する契約方法
境界でトラブルになる要因のひつつに
売主が「実際にここが境界だと認識しているところ」を明示すれば足りる認識している不動産業者が、売主の主張線を境界であると買主に説明し、そのまま取引を進めてしまうことが少なくないのです。
これは、完全に不動産業者の取引に対する認識不足です。
併せて、隣地との間に境界標や塀などがあり、隣地所有者との間に特に紛争もないと判断し、隣地所有者との立会いをも省略して明示した場合、明示された境界が、後日、確定した境界と異なることもあり、これが大きなトラブルに発展する原因になるのです。
その場合、 隣地との境界立会いのうえ、測量図または確測量図を作製し、境界標を設置して明示する「実測・代金清算型」あるいは「確定測量・代金清算型」の契約書を利用することでトラブルは回避することができます。
境界確定は売買契約締結前に行うことが原則
境界確定は、売買対象物件の特定が目的ですから「実測・代金清算型」「確定測量・代金清算型」の場合だけでなく「売買代金固定型」の場合でも行う必要があります。
1.境界標がある場合
境界標は、コンクリート標、石標、木杭、金属鋲、金属標など種類がたくさんありますので、まずは境界点がどこなのかを確認します。
比較的新しい開発分譲地や、確定測量図済みの物件で、境界標がはっきりと確認できる場合でも、念のため地積測量図を基に境界標間の距離をメジャーで確認します。
2.境界標がないか確認できない場合
物件によっては、境界標がない場合があります。また、境界標の上に塀や工作物があり境界標の一部が確認できない場合があります。
境界標が確認できない場合は、売買契約締結前に隣地所有者の立会いを得て、資格ある者(土地家屋調査士)の測量による測量図を作製しておくべきでしょう。
3.境界トラブルがある場合
売主へのヒアリングの結果、境界についてトラブルがあることが判明した場合は、その原因を明確にした上で、境界標を設置、復元してから契約を締結する必要があります。
隣接地所有者との話し合いがつかない場合は弁護士などへの相談が必要になるでしょう。
境界の明示の注意点
1.まず、確認しなければならないこと
どのよう形の契約を締結するにしても
◆確定測量図または測量図等の測量図面の有無
◆法務局備付の地積測量図の有無
◆境界石および境界線ならびに隣地境界にあるフェンス、プロックなどの所有権の帰属
境界線の確認は、例えば、プロック塀の場合、ブロックの中心なのか、内側なのか、外側なのかを確認することです。
2.次に、越境物の確認が必要になります
隣地からの建物の屋根、庇(ひさし)、バルコニーや塀等の境界越境物の有無を確認しておかなければなりません。
併せて、境界等の確認の結果、隣地からの越境物、また逆に隣地への越境物があることが判明した場合は、対処方法についての特約や覚書が必要になります。
3.作成された測量図と現況の相違を確認
売買契約前に作成されている測量図面については、現況との相違がある場合も少なくありません。新たに測量を行うかどうかを問わず、宅建業者は、現地にてテープをあてて確認していますので、測量図との相違の有無や状況を確認するようにしてください。
4.物件状況等報告書の「境界・越境の状況」欄
物件状況等報告書の作成は、原則は売主に記載してもらうのですが、宅建業者も、売主に対し、境界に関する問題の重要性を説明し、この欄に正確に記載をしてもらうよう求めてきます。
そして、買主に対しても同様に理解を求めてきますので、必ず境界についての説明を聴くようにしてください。
越境がある場合の特約条項(参考)
イ.越境物是認の特約条項
買主は、本物件について〇側隣接地△△番△△からの×××の越境があることを確認し、現状のまま買受けます。
※補足/上記特約条項を記載するだけではなく、買主には現地にて越境内容を十分に説明しておかなければならないことは言うまでもありません。
ロ.隣地からの承諾書の取得を条件とする特約条項
1.買主は、本物件について〇側隣接地△△番△△からの×××の越境があることを確認し現状のまま引渡しを受けるものとします。
2.売主は、前項の隣接地所有者〇〇 〇〇より当該越境部分を隣接地所有者が建物を建て替える時までに除去する旨の承諾書を取得します。
3.前項の承諾書が令和〇年〇月〇日までに取得できない場合には、売主及び買主は、本契約を解除することができるものとし、解除した場合、売主は買主に受領済の金員を無利息にてすみやかに返還しなければなりません。
※補足/隣地からの越境があり、隣地所有者からの承諾書の取得を条件に、当該越境の存在を前提として取引する場合の特約
ハ.隣地への越境がある場合の特約
売主は、本物件建物の〇側部分の一部が隣接地△△番△△に越境しているため、所有権移転の時期までに自己の責任と負担において越境部分を撤去、補修して、買主に本物件を引渡します。
※補足/隣地とすで合意があり、買主がその内容を引き継ぐことを了解したときは、その旨を物件状況等報告書の「その他買主に説明すべき事項」に記人し上記の特約条項を用いず契約を進めることもあります。
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