「引渡し」の条項とは?不動産売買契約書
不動産(土地・建物・マンション)を売買する際の契約書には「引渡し」という条項があります。
そこで今日は、「引渡しの条項とは?不動産売買契約書」について書いてみたいと思います。
契約書には、全宅連・FRK・全日・全住協、それぞれ独自のものがあり、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。
このブログでは、全宅連とFRKの条項を参考に説明したいと思います。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
引渡しの条項
【全宅の契約書】
第●条 引渡し
売主は、買主に本物件を標記の期日(C)までに売買代金全額の受領と同時に引渡す。
【FRKの契約書】
第●条 引渡し
1.売主は、買主に対し、本物件を表記引渡日に引渡します。
2.売主、買主は、本物件の引渡しに際し、引渡しを完了した日(以下「引渡完了日」という)を記載した書面を作成します。
引渡しの趣旨
引渡しの趣旨は、
所有権移転の具体的内容として、売主と買主の合意によって定めた引渡日に対象物件を引き渡さなければならないことを定めた条項です。
この条項での所有権とは、民法で定義されている、土地や建物などの不動産を自由に使用・収益・処分することができる権利のことなので、いつの段階で売主から買主の物になるのかを決めて引渡すという内容になっています。
また、FRKの契約書では、引渡完了日を確定するために「引渡を完了した日を記載した書面(売買物件引渡完了確認書)」を作成することにしています。
全宅連の契約書では、その書面についての記載はありませんが、不動産会社独自の書面で引渡しの完了を当事者と宅建業者で確認を行っています。
引渡日の設定と引渡完了日について
民法上、原則として、売主は、買主の売買代金全額の提供(支払)があるまで、対象不動産の引渡しを拒むことができます。
民法533条/同時履行の抗弁
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
つまり、代金支払いと引渡しは同時履行の関係にあるので、売主は、買主が売買代金全額の支払いをしない限り、本物件の引渡しを拒否しても、債務不履行にはならないということです。
このことから、引渡日は、できる限り売買代金全額を受け取った日とするべきなのです。
なぜなら、代金の支払いと引渡しを同日にすれば、互いに相手方の義務(売主は物件の引渡し、買主は売買代金の支払い)が実際に行われない限り、自分の義務の履行を拒めるので、売主と買主の間の公平を図ることができるからです。
代金支払日と物件の引渡日が異なるケース
実際の取引では、現実問題として、代金支払日と異なった日に引渡日を設定せざるを得ない場合があります。
この場合、仲介業者は後日のトラブルを避けるため、売主から引渡し可能日について、その事情を予めよく聴いてから引渡日を設定し、その内容を買主に説明することが重要になってきます。
仲介業者としては、引渡日の設定は残代金支払い日にできるだけ近接した日(おおむね3日から1週間以内)に設定することを売主には説明しています。
また、契約不適合責任の起算日や公租公課の分担等は、実際に引渡しを行った日を「引渡完了日」として基準日としています。
引渡し猶予期間中の使用貸借
所有権移転(代金全額の支払い)と引渡日が同時ではない場合には、一定の期間、所有者ではない者が、他人の物を使用することになります。
そのため、その期間の使用料を支払うかどうかが問題になることがあります。
このような場合に、使用料等を支払うかどうかは当事者の協議に委ねられますが、所有権移転が先行して引渡しが後になるときには、後日の引渡しに際して売主(この時点では前所有者)に引渡し拒否の理由を与えないため、使用料の授受はない(使用貸借)方が良いいでしょう。
使用貸借は、無償で使用を認めるので、使用貸借契約においては、貸主は原則としていつでも借主に対して契約を解除し、物の返還を要求することができるのです。
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