所有権移転登記に伴う「所有権移転請求権仮登記」の特約とは?不動産売買契約書
不動産(土地・建物・マンション)を売買する際の契約書には「所有権移転登記の申請」に伴う「所有権移転請求権仮登記の特約」を付すことがあります。
そこで今日は、「所有権移転請求権仮登記の特約」について書いてみたいと思います。
契約書には、全宅連・FRK・全日・全住協、それぞれ独自のものがあり、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。
このブログでは、全宅連とFRKの条項を参考に説明したいと思います。
筆、新築一戸建て購入応援「仲介手数料・無料・0円・ゼロ・サービス」の加古川の不動産売買専門会社、未来家(みらいえ)不動産株式会社、代表、清水 浩治
所有権移転請求権仮登記の特約条項
所有権移転請求権仮登記の特約
売主は、第1回内金受領と同時に本物件につき買主と協力して所有権移転請求権の仮登記の申請手続きをしなければなりません。
ただし、この登記に要する費用は買主の負担とします。
所有権移転請求権仮登記の趣旨
所有権移転請求権仮登記の効力は、将来の本登記の順位保全ができるということです。
つまり、登記の効力には対抗力というものがあるのですが、その対抗力は基本的には早いもの勝ちになります。
分かりやすく言うと、売主とあなたの間で売買契約が成立したとしても、その後、売主があなととは別の買主と二重売買を行い、その買主が先に所有権移転登記をしてすまうと、原則として最初の買主(あなた)は後の買主に対して所有権を主張することができないのです。
ただし、仮登記があれば将来、本登記したときにはその順位は仮登記をしたときの順位になるので、結果として仮登記のときに遡って対抗力が生じることになるのです。
不動産登記法第106条(仮登記に基づく本登記の順位)
仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。
なぜ「仮」登記というのでしょう?
なぜ仮登記かというと、本登記のための条件が満たされていない場合に仮に行うからで、通常の登記条件のうちの、何かが欠けているからです。
登記申請に必要な書類がそろわない場合や、買主がまだ所有権を得てはいないが、将来、その物件を保有する「予約者」としての権利を得る場合などに、その優先順位を確保するために行う登記です。
仮登記には対抗力はありませんが、後に本登記したときに、仮登記の順位で本登記がされ、対抗力をもつことになります。
本来、登記をした順番によって優先順位が決まるのですが、少々の要件不備によって登記がまったくできないということは当事者にとって不利益になるので、それを防ぐものとして仮登記が認められています。
購入代金の一部を手付金や中間金として支払った段階では、本登記を行うことはできませんが、その不動産の所有権が将来移転することを示すために仮登記を行います。
そうすることで、売主が万一、第三者と二重売買したとしても、仮登記をしておけば、後から購入した第三者に所有権を対抗することができるのです。
仮登記の効力は非常に強いものです
仮登記が本登記された場合は、仮登記後にされた所有権移転登記や抵当権設定登記は、本登記と両立しないので、職権で抹消されます。
つまり、不動産を取得したとしても、その不動産に所有権移転請求権仮登記が設定されていたら、その仮登記が本登記されてしまうと対抗できずに、仮登記後に購入した買主は所有権を失ってしまうのです。
そのため、仮登記がある不動産を取得するのは非常に危険なのです。
ただし、所有権移転請求権仮登記を本登記にする場合に登記上の利害関係を持つ第三者がいるときは、その承諾を得なければなりません。
利害関係を持つ第三者とは、仮登記の後に所有権移転登記を受けた人のことですが、自分の権利がなくなってしまうので、本登記を承諾することはないでしょう。
その場合は、所有権移転の本登記承諾を請求する裁判を起こし、確定判決を得て承諾に代えることができます。
売主の保護を考える
上記のことから仮登記の効力は非常に強いので、売買において仮登記を設定するかどうかについては売主の保護を考える必要があります。
たとえば、買主が売買代金のうち何割ぐらいを売主に支払えば仮登記をしたほうがいいのかです。
その額は、あくまで売主と買主との交渉で決めるべきもので一概にはいえません。
ただし、宅建業者(仲介業者)としては、授受される金額、売主側の信用等の事情によっても変わってくるでしようが、売買代金の5割を超える金額が手付金または内金として授受されたときは、仮登記の設定を勧めることになるでしょう。
仮登記設定後の契約解除と原状回復
仮登記設定後に万一売買契約が解除されたときは「原状回復」することが必要になり、その場合、売主は受領済の金銭を買主に返還し、買主は仮登記の抹消をすることになります。
この金銭の返還と仮登記の抹消との関係は同時履行の関係になります。
ただし、売主が返還すべき金銭をすでに使っていて返還できない場合などは、原状回復が困難になる場合もあります。
したがって、仮登記を設定するときは、同時履行ができる状況なのかなど、間題点を十分調査検討しなければなりません。
言い換えると、簡単に仮登記を設定すべきではないということです。
関連した記事を読む
- 2024/10/28
- 2024/10/27
- 2024/10/26
- 2024/10/09