不動産売買における「違約金」と「損害賠償」
他社で契約をされた人のご友人(私が以前勤務したいた会社の既成約者)から、こんな質問がありました。
要約すると、「先日、マンションを売却する契約をしたのですが、手付解除の期限が過ぎたにもかかわらず、買主が、事情があって契約を白紙にしたい、と言ってきました。
もちろん、白紙にするつもりはありません。
売買契約書には違約金や損害賠償って言葉がありますが、どのように対処したら良いのでしょうか?」・・・・・という内容です。
そこで今日は、不動産の売買における「違約金」と「損害賠償」について書いてみたいと思います。
「違約金」と「損害賠償」
違約金とは、売買契約において、契約違反(債務不履行)をした場合に、相手方に支払うことを予め約束しておく金銭のことをいいます。
違約金は、「損害賠償額の予定」である場合と、「違約罰」である場合があります。
「損害賠償額の予定」とは、実際に生じた損害額が予め約束した金額を上回っても、下回っても、損害賠償を請求できる額は約束した金額とし、その差額は互いに請求できない場合をいいます。
契約書上、これと異なる定めがなければ、違約金は「損害賠償額の予定」となります。
「違約罰」とは、実際に発生した損害については賠償責任が発生し、それに加えて、約束した金額を支払う場合をいいます。
一般的な不動産売買契約での「違約金」と「損害賠償」は、契約違反によって生じた損害賠償を、違約金として支払うことが一般的になっています。
つまり、「違約金」と「損害賠償」は、同じような意味合いで扱われている場合が多いのです。
売買契約締結後で、手付解除期日や、ローン特約の期限が過ぎたあとに、買主の一方的な事情で、契約を解除にすることはできません。
その期日を過ぎてしまうと「契約違反」の対象になり、契約を解除する場合は相手方の同意が必要になります。
ただし、契約違反になるからと言って、手付解除期日やローン特約の期限が過ぎてからの契約解除の申し出全てが、即、「違約解除」の対象になるわかではありません。
「違約解除」と「合意解除」 不動産会社の責任者にも認識間違いが多い不動産売買契約の「違約解除」
1.違約金とは?
違約金とは、売買契約の後で契約違反(債務不履行)があった場合に、違反した人が相手方に対して支払うことを予め約束した金銭のことを言います。
不動産の売買では、
売買価格の20%を違約金として定めることが一般的で、最近では10%にすることも多くなってきまました。
なお、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合は、違約金と損害賠償額の合計が、売買価格の20%を超えることができないことになっています。
もし、20%を超えた額を定めたとしても、20%を超える部分については無効になります。
2.損害賠償とは?
損害賠償とは、契約違反(債務不履行)によって、違反した人が相手方に損害を与えた場合に、その損害を賠償するために支払う金銭のことをいいます。
違約金のように損害賠償額が決められているわけではなく、損害賠償額を立証するには、手間や時間、費用が掛かかってしまいます。
その為、相手方に損害賠償があった場合は、敏速に解決することができません。
それを防ぐために、不動産の売買では、予め約束していた違約金を損害賠償として支払うことが一般的になっています。
このことについては、一般社団法人 不動産流通経営協会の売買契約書にも記載されています。
第●条(契約違反による解除・違約金)
売主、買主は、その相手方が本契約にかかる債務の履行を怠ったとき、その相手方に対し、書面により義務の履行を催告したうえで、本契約を解除して表記違約金(以下「違約金」という。)の支払いを請求することができます。なお、違約金に関し、現に生じた損害額の多寡を問わず、相手方に違約金の増減を請求することができません。
つまり、もし損害額が違約金よりも「高かった」もしくは「安かった」としても、予め約束していた違約金の額を支払うことになります。これが裁判になったとしても、裁判所もこの金額を増減することはできません。
例えば、売却価格が2,000万円で、違約金が400万円と定められている場合、損害額が600万円だったとしても、相手方に400万円しか請求することができません。逆に、損害額が200万円だったとしても、相手方に400万円を請求することができます。
3.違約金さえ支払えば一方的に契約解除できるわけではない
気を付けて頂きたいのが、どちらか一方が(売主か買主)が事情により売買契約を解除にしたいと思ったとしても、違約金さえ支払えば一方的に解除できるわけではありません。
契約違反があった場合は、その相手方である売主に下記の2つの選択肢があります。
●違約金を請求して契約を解除する。
●このまま契約の履行を求める。
どちらの選択肢を選ぶかは、あくまでも違約をされた側が決めることです。違約した側には選択権はありません。
民法では「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」と定められています(第420条第2項)。
つまり、違約金(賠償額の予定)は、契約の履行を求める(履行の請求)ことも、契約を解除する(解除権の行使)ことも、妨げてはならないことになっているのです。
したがって、違約金を支払ったからと言って、違約した側が自ら契約を解除することができないわけです。
4.既に受け取った手付金などのお金はどうなるの?
契約違反によって違約金が支払われた場合は、基本的に手付金は、返還しなければなりません。
もし、売主が契約違反した場合は、受け取った手付金を無利息にて返還し、違約金を支払います。
逆に、買主が契約違反した場合は、手付金を違約金に充当することができるようになっています。
このことについても、一般社団法人 不動産流通経営協会の売買契約書に記載されています。
違約金の支払いは、清算は次のとおり行います。
(1)売主が違約した場合、売主は、買主に対し、すみやかに受領済みの金員を無利息にて返還するとともに、違約金を支払います。
(2)買主が違約した場合、違約金が支払済みの金員を上回るときは、買主は、売主に対し、すみやかにその差額を支払い、支払い済みの金員が違約金を上回るときは、売主は、買主に対し、受領済みの金員から違約金相当額を控除して、すみやかに残額を無利息にて返還します。
まとめてみました!
重要な点をまとめますと、下記の通りになります。
●契約違反(債務不履行)により、相手方に損害を与えた場合は、損害賠償として違約金を支払うことが一般的です。
●違約金の額は、10~20%で定められることが多く、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合は、20%を超えることはできません。
●違約金さえ支払えば、支払った側が一方的に契約解除できるわけではありません。
●違約金が支払われた場合は、既に受け取ったお金(手付金など)は返還しなければなりません。
最後に、ここでお話しした内容は、不動産の一般的な売買契約書や民法に基づいた内容です。もし、不動産会社が売買契約書に特約を入れたりすれば、話が変わってくる可能性がありますので、ご注意ください。
関連した記事を読む
- 2024/10/09
- 2024/02/19
- 2023/03/27
- 2022/08/25