接道と越境の調査を怠った売主と媒介(仲介)業者に損害賠償を命じた紛争事例
今日ご紹介するのは、
土地が公道(道)に接していないこと、及び建物が隣接する国有地に越境していたことについて、売主である宅建業者と媒介(仲介)業者の調査説明義務違反に対し買主の損害賠償請求が認められた紛争事例です。
売主(宅建業者)と媒介(仲介)業者の言い分が、不動産を取り扱うプロとして、こんな不動産業者もいるんだ、と思えるほどあり得ない内容ですので、是非最後までお付き合いください。
紛争の内容「接道と越境の調査を怠った売主と媒介(仲介)業者」
①買主X(個人で非宅建業者)は、売主A社(宅建業者)から、B社の媒介(仲介)によって、土地建物を、売買代金8,500万円で購入しました(売買対象の土地を「本件土地」 建物を「本件建物」という)。
本件建物は、店舗兼用住宅です。
②本件土地は、北側が私道に接し、西側が細長い国有地(以下「本件国有地」という)に接しています。本件国有地は、本件土地とは反対側の西側で公道(以下「本件公道」という)に接しています(上記の現況図を参照ください)。
本件土地の地積測量図(法務局備付の図面)は存在していません。
本件土地の南側と東側には隣地との境界を示す境界標が設置されていましたが、北側及び西側には境界標が設置されていませんでした。
本件土地の西側は、公図上、公道とされる部分と本件国有地が区別されていて、国有地については、地積測量図が存在していました。
③本件建物は、5階建の店舗兼共同住宅であり、本件土地上に建てられていましたが、建物の西側の一部が、本件国有地に越境していました。
なお、公道沿いには本件国有地以外にも帯状に国有地が連なっており、本件建物のほかにも建物がそれぞれの国有地上に越境した状態で建築された建ち並んでいました。
④本件売買契約の締結にあたり、A社の従業員及びB社の宅地建物取引士は、いずれも、買主Xに対し、本件土地は北側の私道と西側の本件公道に接した角地であり、本件建物には隣地への越境はない旨で説明し、その内容の重要事項説明書を交付していました。
また、B社の宅地建物取引士は、重要事項説明書に、本件土地の建ぺい率には角地緩和が適用される旨も記載し説明していました。
⑤買主Xは、本物件を購入して4年後に、初めて本件各国有地が本件土地の西側に存在することを知り、その2年後に、50万円を支出し、本件国有地を買い取ることになりました。
各当事者の言い分
<買主Xの言い分>
①説明義務違反
A社は売主として、B社は媒介(仲介)業者として、それぞれ本件土地の境界を明示する義務、及び買 主の契約判断に重要な影響を及ぼす事実について説明する義務を負い、また、これらの義務の前提となる調査義務を負っているはずなのに、それを怠った。
公図には、道とされる部分と本件各国有地は区別して表示されているところ、A社もB社も、公図等を調査し、本件各国有地は本件公道の一部ではないと判断すべきであった。
それにもかかわらず、公図等の調査を行うことなく、本件土地が本件公道が接する角地であるかのように事実と異なる説明をし、また、本件建物が本件国有地に越境している事実も説明していない。
よって、調査、説明義務に違反したものとして、買主Xに対し債務不履行責任を負う。
②損害の有無及び額
A社とB社の調査、説明義務違反によって、本件国有地を買い取ることになり、買取代金等50万円を支出した。
また、本件土地が角地ではなかったのであるから、適正価格は、購入価格である8,500万円を下回る7 , 650万円であり、さらに、本件国有地の買取りへの対応を強いられるなどの精神的苦痛を被った。
買取代金、購入価格と適正価格の差額、慰謝料の合計が損害として請求する。
<売主A社、媒介業者B社の言い分>
①説明義務違反の有無
本件土地の北側、及び西側には境界標は存在せず、本件土地の西側にはすぐに本件公道が在り、また本件公道沿いの建物は、ほぼ一直線に並んで建てられている。
この状況からみれば、本件各国有地は本件公道の一部をなしていると判断するのが通常である。
売主A社は、前所有者から、公道との非接道や越境について知らされていない。
また、本件土地には地積測量図が存在せず、土地の形状や面積から、本件建物が本件国有地に越境していると認識することはできなかった。
加えて、この売買は公簿売買であって、新たな測量をしないことについて買主Xも了承していた。
以上から、売主A社、及び媒介業者B社において本件土地の測量をして越境の有無を調査すべき義務があったとはいえない。
②損害の有無、及びその額
本件国有地の買取りについては、A社・B社に責任はなく、また、特定物である売買の目的物を取得することができているのであるから、価格の下落や慰謝料請求は認められない。
③過失相殺
買主Xが本件土地の測量を求めていれば、本件各国有地への越境が認識できた可能性があったのであるから、測量を求めなかった買主Xに調査義務違反の過失がある。
本紛争事例の問題点
①説明義務違反の有無
②損害の有無、及び額
③過失相殺
本紛争事例の結末
裁判所は、
①説明義務違反の有無、②損害の有無、及び額、③過失相殺については次の通りとし、宅建業者A社・B社の調査・説明義務違反を認め、国有地の買取り代金を損害として買主Xへの賠償を命じました。
ただし、買主Xが請求した適正価格と差額や慰謝料については、損害とは認めませんでした。
①説明義務違反の有無
①説明義務違反の有無
売買契約の締結当時、公図上に本件国有地が本件公道とは区別されて記載されていたのであるから、宅建業者であるA社もB社も、本件国有地が公道の一部ではなく本件建物の敷地になっている可能性を疑うべきでした。
加えて、本件各国有地の地積測量図が存在していたのですから、A社もB社もこれにより本件各国有地の位置や形状を確認することもでき、この越境の可能性を十分に認識できたと考えられます。
A社・B社は、本件土地の地積測量図が存在していなかったことや、本件土地の西側に境界標が存在していなかったことを免責事由として指摘していますが、これらはむしろ越境の可能性を疑うべき事情であったというべきです。
つまり、A社・B社において、本件建物が本件国有地に越境している可能性を疑うべき事情が複数存在していたにもかかわらず、必要な調査を怠り、本件建物は本件土地上に存在していて越境はないという事実に反する説明をしたことは、本件売買契約、又は本件媒介契約上の調査、説明義務違反があったとするべきです。
②損害の有無、及び額
②損害の有無、及び額
本件国有地の買取代金50万円は、A社・B社の調査、説明義務違反による損害であり、買主Xに賠償すべき責任を負う。
しかし、その他の請求については損害とは認められない。
本件売買契約は公簿売買による特定物売買であったところ、買主Xは、契約の目的たる本件物件を入手しているのであるから、適正価格との差額について損害を被ったとはいえない。
また、金銭的な請求にかかる事件については、その給付を受けることにより損害自体が填補されることから、特段の事情がない限りは慰謝料請求を基礎づけるべき精神的苦痛は生じないといえるから、慰謝料も損害とは認められない。
③過失相殺
③過失相殺
A社・B社は、宅建業者であるにもかかわらず、一般人である買主Xに対して、本件各国有地の存在すら説明することができていなかった。
よって、買主Xが、A社・B社に対して本件土地の測量を求めなかったことに過失があると認めることはできない。
逆に宅建業者であるA社・B社が現状に疑問を当然に抱き、確定測量を進んで行い買主Xに対し現状を説明するべき事案であったことは言うまでもありません。
本紛争事例から学ぶこと
本紛争事例の特徴は、
公道ではない隣接地(国有地)が公道と並行して帯状に存在し、その土地に越境していた複数の建物が、本件建物を含め直線に並んでいたことです。
また、本件土地と隣接地(国有地)との間に境界標が設置されていなかった。
そのため、現地を見ただけでは本件土地が公道に接道せず、 建物が越境していることが分からなかっただけでなく、むしろ現地調査を行うことによっ て、境界と越境に関する誤解を生じさせる状況になっていたことです。
経験を積んだ宅建業者は、現地調査によって、権利関係を推測できることが多いのですが、現地の状況か ら権利関係を推測することを否定するべきではなく、むしろ効率的な業務上の手法として推奨されるべきでなのです。
しかし、その宅建業者の判断が、現地調査による推測だけにとどまり、公図や関係書類の調査を怠るようなことがあれば、深刻なミスをおかすことにも事実です。
本紛争事例は、接道と越境について説明をしな かった事案ですが、それは無知や経験不足から生じたのではなく、現地調査と今までの経験からの思い込みによって生じたものなのです。
本紛争事例から、現地がいかなる状況であったとしても、公図や関係資料の確認調査を欠かしてはならない、ということを学ぶことができたと思います。
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