法令上の制限調査不備で売主宅建業者と媒介(仲介)業者に損害賠償責任が認められた紛争事例
今日ご紹介するのは、法令上の制限調査等の不備など規制内容に関する売主(宅建業者)と媒介(仲介)業者の告知義務違反です。
具体的には、
第2種高度地区の規制により買主が希望していた延べ床面積100㎡の建物が建築できないことを説明をしなかった媒介(媒介)業者と重要事項説明に立ち会わず媒介(仲介)業者の不十分な説明を見過ごした売主(宅建業者)に損害賠償責任が認められた紛争事例です。
紛争の内容(法令上の制限調査等の不備が原因とされる紛争事例)
(1)平成18年6月、
買主Xは、本件土地(地積33.02㎡、建ぺい率80 %、容積率300 %、第2種高度地区)について、媒介(仲介)業者Bの媒介により、売主(宅建業者)Aとの間で代金2 , 830万円とする本件売買契約を締結しました。
また、設計事務所Yと、購入目的である延べ100㎡程度の鉄骨造4階建、居宅兼工房の建築設計契約(※基本設計)を締結しました。
同年7月、買主Xは本件土地の引渡しを受けました。
※「基本設計」とは、お客様とデザイン・イメージの共有を目的としていて、イメージを明確にするためにCG等利用しデザインを決定する為の図面(設計)です。
※XはYに対しても訴訟を提起しましたがYが和解金を支払い和解しています。
(2)本件売買契約に先立ち行った重要事項説明において、媒介(仲介)業者Bは買主Xに対し、本件土地の建ぺい率、容積率、第2種高度地区の区域内にあることの説明をしましたが、制限内容の具体的な説明や資料の添付はしていなかった。
また、売主(宅建業者)Aは重要事項説明に同席しなかった。
(3)同年12月、
Xは「※実施設計」を依頼した工務店Mより、第2種高度地区の制限(高さ5 m以上の部分が斜線制限を受けるため、一般的な建物では3階以上の部分が斜線制限の影響を受ける)により、本件土地では延べ100㎡程度の建物建築は不可能であるとの報告を受けたのです。
※「実施設計」とは、決定された基本設計に基づき、建築を実際に施工するための設計図書(設計図、仕様書、各種計算書、工事予算書など)を作成する業務で、施工業者と建築主との契約に必要な詳細を決める設計のことです
(4)本件土地での目的建物の建築を諦めた買主Xは、A・Bとの間で本件土地の買戻しに関する交渉を行ったが折り合わず、その後、本件土地の売却先が見つかったため、Xは本件土地を2 , 860万円で売却しました。
(5)平成19年10月、
XはAとBに対し、転売に要した諸費用、設計監理業務報酬、慰謝料、弁護士費用等、計457万円余の損害賠償を求める本件訴訟を提起しました。
各当事者の言い分
<買主Xの言い分>
(1)媒介(仲介)業者Bに、Xは本件土地に延べ100㎡程度の建物建築が可能か確認したところ、Bは、「第2種高度地区」である説明はしたが、その意味を説明しなかった。
Bは、媒介契約締結時に、「4階建は問題なく建つ」とXに誤った説明をしていた。
(2)売主Aは宅建業者であり、売主の重要事項説明義務は、他の宅建業者が売買を媒介した場合でも免除されることはなく、Xに対し、重要事項説明義務を負う。
<媒介(仲介)業者Bの言い分>
(1)買主Xは、売買契約を締結するにあたり、建築設計事務所Yと相談しており、本件土地上にどの程度の建物が建つかBに対しロ出しさせなかった。
(2)重要事項説明書に基づき、「第2種高度地区」の説明はしており、4階建の建物が建っという説明はしていません。
<売主(宅建業者)Aの言い分>
(1)媒介(仲介)業者Bは、重要事項説明において「第2種高度地区」について説明している。
(2)買主Xの建物建築計画については聞かされていないし、買主X、及び媒介(仲介)業者Bから、Xには建築士がついており、本件土地にどの程度の建物が建築可能か理解していると聞いていました。
本紛争事例の問題点とは
(1)買主が取引不動産で購入目的の使用ができない場合と宅建業者の調査説明義務
(2)宅建業者が他の宅建業者に依頼した重要事項説明に説明不足があった場合の、説明に立ち会わなかった宅建業者の説明責任
本紛争事例の結末
判決では、媒介(仲介)業者B、売主(宅建業者)Aのの説明義務違反(債務不履行)を認定し、 買主Xの損害賠償請求の一部を認めています。
(1)媒介(仲介)業者Bの説明義務違反について
①媒介(仲介)業者Bは、宅建業者として、本件媒介契約に基づき、本件土地に関する法的規制を説明する債務を負うところ、買主Xより本件土地に延べ面積100㎡程度の建物を新築すると告げ られていた本件事情の下においては、単に存在する法的規制の種類、名称等を告げるのみでなく、法的規制の具体的内容の説明を通じて、X希望の建物が建築できない説明をすることもその債務に含まれる。
買主Xは媒介(仲介)業者Bより「100㎡の家は問題なく建つ」旨の説明を受けたと供述していること、Bは「第2種高度地区は20mとか25mの高さの制限である」などと誤った知識を有していたことが窺われることから、Bは、第2種高度地区の規制によりXの希望に沿う建物が建築できないことを説明しなかったと認められる。
したがって、Bには、本件媒介契約に基づく説明義務に違反した債務不履行がある。
②Bは、「Xは、建築設計事務所Yと相談しており、本件土地上にどの程度の建物が建つかロ出しさせなかった」と主張するが、契約日前日に、わざわざ、売買契約書及び重要事項説明書を事前に説明させていることに照らしても、その主張は採用できない。
(2)売主(宅建業者)Aの説明義務違反について
Aは、Bを通じてXが本件土地に建物を新築予定であること、Bの重要事項説明書には「第2種高度地区」と記載されているだけで、規制内容を説明する添付資料が含まれないことを認識していたところ、Bの重要事項説明に立ち会っていれば、その説明が不十分であることを認識できたにもかかわらず、立会いを行わず何らの説明をしていない。
Aは、Bを信頼し、説明の機会を放棄したことをもって、Xに説明義務違反による被害を転嫁することは相当とはいえない。
したがって、Aには本件売買契約に付随する説明義務に違反した債務不履行がある。
(3)損害賠償について
Xの請求のうち、本件土地の転売に要した諸費用等307万円余について認容する。
※A・Bは控訴したが、A・BがXに、一審の認容額とほぼ同額の解決金を支払うことにより和解をしました。
本紛争事例に学ぶこと
(1)不動産の取引において買主が購入目的の使用ができるかについて、宅建業者が通常行う公法規制等の調査を確実に行う必要があり、もし制限等がある場合には、その内容を具体的に説明することが必要なのです。
この説明義務は、買主が他の専門家(建築士)等に相談をしていたとしても免れることにはならないのです。
(2)前記(1)において、買主の目的使用ができるかについて、宅建業者の調査では不明で、建築士等の専門家による調査が必要と認識した場合には、買主に、専門家への調査依頼が必要な旨のアドバイスを行い、その確認が得られるまで契約を行わないことが必要になります。
媒介(仲介)業者等の軽はずみな 「〇〇は可能」と買主に保証をするような言動には注意が必要かもしれませんね。
(3)宅建士には、重要事項説明においては、法的規制の種類、名称等を告げるだけでなく、法的規制の具体的な内容を通じて、買主が十分理解できるような説明をする必要があるのです。
(4)共同媒介(仲介)等の場合において、他の業者の宅建士が重要事項説明を行う場合においても、重要事項説明の場には同席し、説明をする宅建士に説明不足・誤りがあった場合には、補足説明・修正等を行う必要があるのです。
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