他人物売買取引における媒介(仲介)業者の調査義務違反による損害賠償責任
土地の所有権者と売買契約を締結したとする転売人に成りすました者と売買契約を締結し(いわゆる「他人物売買」)、手付金を騙取された買主宅建業者の損害につき、媒介(仲介)業者に対して善管注意義務違反が有ったとして賠償責任が認められた事例です。
つまり、媒介(仲介)業者の調査不備が原因とする紛争事例です。
紛争の内容(土地の転売買)
①宅建業者であるXは、登記上の名義人がAである土地(以下「本件土地」という)について、Aと本件土地の売買契約(以下「一次売買契約」という)を締結したと主張するBとの間で、Yを媒介人(仲介人)として、土地売買契約(以下「本件売買契約」という)の交渉を行った。
②XとBは、契約交渉が成立し本件売買契約を締結することとなり、Bの事務所で調印することとなった。
③契約締結当日になって、調印会場が、Bの事務所からYの事務所に変更されたり、Bの事務所には事前の説明と異なる会社名が掲げられていることが確認されたが、最終的に本件売買契約は締結した。
④その後、Bから示されていたAとBとの間の一次売買契約にかかる契約書は偽造で実在しておらず、Xは、本件土地を取得できないばかりか、Bに手付金500万円を詐取されてしまったことが判明した。
⑤そこで、Xは、Yに対し、本件売買契約が他人物売買契約であるところ、Yが一次売買契約に関し更なる確認を行っていればこのような被害は生じなかったとして、手付金相当額500万円の損害賠償を求め、訴訟を提起した。
各当事者の言い分
<転買人Xの言い分>
①媒介契約書は作成されていないが、Yは、重要事項説明書や本件売買契約書に媒介人として記名押印している上に、本件売買契約の締結がYの事務所で行われており、XY間の媒介契約は成立している。
②本件売買契約が他人物売買契約であることからすれば、Yは、本件土地の登記名義人である AがBに対して本件土地を売却する意思があるか確認する義務を負っていたにもかかわらず、一次売買契約に媒介人として記載されていた宅建業者に確認もしなかったのだから、 Yには善管注意義務違反がある。
<媒介業者Yの言い分>
①X及びYの間に媒介契約書は作成しておらず、媒介契約は成立していないので、Yは、媒介契約に基づく調査義務を負うものではない。
<本紛争の問題点>
①取引に不審を抱く状況があった場合における宅建業者がとるべき対応
②他人物売買における、二次売買(本件売買)に関与する宅建業者の一次売買に関する調査義務
本紛争の結末(土地の転売買)
裁判所は、
XY間に媒介契約が成立していたことを認定した上で、
①本件売買契約が他人物売買契約でありBが本件土地の所有権を取得できなければXに損害を与えることになることを容易に知り得たこと
②本件売買契約の調印会場が直前になって変更されたり、Bの事務所には事前の説明と異なる会社名が掲げられているなど不信感を抱く状況があったことからすれば、YにはAに本件土地を売却する意思があるか否かについて、Bが持参した一次売買契約の内容を確認するだけでなく、同契約書に媒介者として記載された宅建業者に連絡を試みるなどして確認すべきであったが確認をしなかった注意義務違反があるとし、YのXに対する損害賠償責任を認めた。
もっとも、裁判所は、
Xが宅建業者であり、Bが本件土地の所有権を取得できない場合のリスクを理解していたと思われる上に、上記の不信感を抱くに足りる事情があったことからすれば、Yに対して、どの程度調査を尽くしているか確認を行い、更に調査を行うように指示すべきであったにかかわらずこれを行わず、安易にこれを信頼したのだから、この点に過失があったとして、Xにも2割の過失があるとした。
結論として、裁判所は、Yに対して、Xが主張する既払いの手付金ち00万円のうち、Yの責任割合に相当する8割の400万円(控訴審は6割・300万円に変更)の損害賠償責任がある旨の判示をした。
本紛争事例から学ぶこと
地面師(騙そうとする者)は、不動産所有者の本人だと誤認させ、また、確実な本人確認をさせないように色々な仕けをしてくるものです。
ですから、宅建業者は、このような被害に遭わない、取引先を遭わせないためにも、売主の本人確認・売却意思の確認などの基本的な調査は、いかなる状況にあっても、相手方の言動に惑わされず確実に行う基本スタンスを貫くことが重要なのです。
もちろん、確認できない場合は取引を行わないのは当たり前のことです。
本人確認における注意事項
①不動産売買における本人確認は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、 宅建業者自らが確実に行う。
所有権移転登記申請時に司法書士も本人確認を行いますが、それはダブルチェックだと考え、売買契約前に確実に行うことが必要なのです。
②自宅や会社への訪問により、本人確認を行う。
自宅等での本人確認が行えない事情がある等と言われた場合には、本人確認のレベルを上げる必要があります。これは、地面師の常套句ですので注意が必要です。
固定資産税等納税通知書などの本人以外の者が入手できない書類の提示を受ける、本人ならば知っている事柄の質問を行うなどにより、より慎重な確認を行う必要があります。
③信用のある第三者の紹介や関与は、本人確認の証拠にならないことに注意する。
「信用のある紹介者がいるから」「弁護士・司法書士等が関与しているから」「公正証書があるから」というような言葉で本人と信用させる手口もよく見られるので注意が必要です。
他人物売買における注意点
他人物売買は、一次売買の成立を前提とすることから通常より買主のリスクが高い取引になります。
また、地面師事件でもよく見られることから、媒介業者は、通常の取引より高い水準の調査義務が求められることになりますので、十分注意をする必要があります。
①一次売買の有効性について、実務的にできる限り可能な範囲において調査を行う。
◆一次売買の契約書写しの取得・契約内容・取引事情等の確認
◆売主が制限行為能力者・無権利者でないかの確認
◆一時売買に不審な点は見られないかの確認
②二次売買(本件取引)の転売者B(宅建業者)の本人確認を確実に行う。
転売者が宅建業者でない場合、地面師事件のほか、宅建業の無免許営業、脱税目的の取引の可能性もあるので、警戒レベルを上げる必要があります。
その他、注意するべき事項
地面師は、「事情があって相場より安く取引できる案件だから、 多少のイレギュラーがあるのは仕方がない。」といった宅建業者の心理をつく常套句で仕掛けをしてくることが多いので、
下記のような事情があった場合は、警戒レベルを上げて対応する必要があります。
①至急資金が必要な事情があり、相場より安く売却してもよいと言ってくる。(即転売可能な、相場の7割から8割前後の価格を言ってくるケースが多い)
②自宅・会社に訪問できない理由を用意して、その場所での本人確認をさせない。また、偽の自宅や会社を用意するケースもあるので、訪問の際には不審な点はないか注意する必要があります。
③ブローカーなど、宅建業免許を持たない者が、案件の紹介元である場合。(無免許業者と宅建業取引を行うことは、無免許営業幇助にあたる)
④急に、取引日や取引場所、決済日や決済方法などを変更する、現金取引にするなど、通常の取引ではまず行われないイレギュラーな取引、または取引変更を申し入れてくる。
⑤本人確認や、イレギュラーな取引、または取引変更の申入れに対して、宅建業者側が慎重に対応しようとすると、「別の買主がいるから、そちらと取引をする」などといって、調査・検討する時間を与えようとしない。つまり、取引した場合の利益をちらっかせ、取引リスクに目をつむらせようとしてくるのです。
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