不動産売買契約書の解説 第16条「引渡し前の滅失・毀損」
第16条「引渡し前の滅失・毀損」
本物件の引渡し前に、天災地変その他売主又は買主のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって、本物件が滅失し売主がこれを引渡すことができなくなったときは、買主は売買代金の支払いを拒むことができ、売主又は買主はこの契約を解除することができる。
2.本物件の引渡し前に、前項の事由によって本物件が損傷したときは、売主は、本物件を修補して買主に引渡すものとする。この場合、売主の誠実な修復行為によって引渡しが標記の期日(C)を超えても、買主は、売主に対し、その引渡し延期について異議を述べることはできない。
3.売主は、前項の修補が著しく困難なとき、又は過大な費用を要するときは、この契約を解除することができるものとし、買主は、本物件の損傷により契約の目的が達せられないときは、この契約を解除することができる。
4.第1項又は前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。
この条項は、
対象不動産の引渡し前に、
買主(債権者)と売主(債務者)の責任ではない事由で、対象不動産が滅失、毀損したとき、その損害(危険)を誰が負担するのかという「危険負担」について定めた内容です。
滅失・毀損・危険負担、そして民法の原則と現実取引とのギャップ・・・債権者主義と債務者主義
「滅失(めっしつ)」とは、
文字通り物理的になくなってしまうこと、または、効用を失ってしまうこと。
「毀損(きそん)」とは、
物の一部が滅失することです。
そして「危険負担」には、
買主が、滅失毀損があっても売買代金を全額支払うべきとする「債権者主義」と、
売主が、売買代金の請求ができないとする「債務者主義」の考え方があります。
民法では、
不動産のような「特定物」売買の場合「債権者主義」を原則としています。
しかし「債権者主義」は、
売主が所有している物件が、滅失毀損しても、
売買代金を全額請求できるという不公正さがあり、
現実的には、ほとんど採用されていません。
双方に与えられている契約の解除権と解除の進め方
対象不動産が毀損し、修復が可能なときは、
売主の負担で修復して引渡し、契約を続行することとし、
逆に、毀損が甚大で、
修復するのに多額の費用や、
多大な時間を必要とするときや、
滅失によって、対象不動産の引渡しが、
確実に不可能になったときは、
売主にも買主にも契約の解除権を与えています。
その結果として、契約解除となった場合は、
売主は、受領済みの金員全額を無利息で買主に返還し、
買主は、自己登記名義、仮登記等があれば、
その抹消登記手続きをするなどの、原状回復だけで済ませ、
売買代金の支払い債務を免れることになっています。
売買契約の続行と解除の選択
この条項の各項目では、
「この契約を解除することができる」と書いてあります。
これは、契約を解除するか、続行するか、選択ができるということです。
例えば、建物が滅失、毀損した場合でも、
土地だけでも契約の目的が
十分に達せられることも少なくないという現実に配慮しています。
売主、買主双方が、
契約続行を選択したのであれば、
売主は、引渡し期日に滅失、毀損した状態で、
対象不動産を買主に引渡し、
買主は、売買代金全額を売主に支払うことになります。
この場合、滅失、毀損した分について、
売買代金を減額する必要はありません。
ただし、売主、買主が合意できれば、
売買代金を減額して
契約を履行できることは言うまでもありません。
もちろん、
売主、或いは買主の責任で起きた滅失、毀損は、
この条項の解除は適用されないことを付け加えておきます。
以下は、土地建物公簿取引用(売主一般消費者)の売買契約書の各条項の一覧です。
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土地建物公簿取引用(売主一般消費者用)の各条項
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