不動産売買契約書の解説 第18条「反社会的勢力の排除 」
第18条「反社会的勢力の排除 」
売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
① 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。
② 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。
③ 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
④ 本物件の引渡し及び売買代金の全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2.売主又は買主の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。
ア 前項①又は②の確約に反する申告をしたことが判明した場合
イ 前項③の確約に反し契約をしたことが判明した場合
ウ 前項④の確約に反した行為をした場合
3.買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないことを確約する。
4.売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。
5.第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、第17条第2項の規定にかかわらずその相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として標記の違約金(G)(売買代金の20%相当額)を支払うものとする。この場合の違約金の支払いについては、第17条第4項に準ずるものとする。
6.第2項又は第4項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。
7.買主が第3項の規定に違反し、本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供したと認められる場合において、売主が第4項の規定によりこの契約を解除するときは、買主は、売主に対し、第5項の違約金に加え、標記(H)(売買代金の80%相当額)の違約罰を制裁金として支払うものとする。この場合第17条第5項の規定にかかわらず、買主は本物件の所有権移転登記の抹消登記手続き、及び本物件の返還をしなければならない。
この条項は、売主、及び買主は、それぞれ相手方に対し、自らが、反社会的勢力(暴力団、その構成員)ではないこと、
及び、反社会的勢力との係わりを一切行わないこと、反社会的勢力排除に向けての確約を定めています。
また、それに違反した場合の契約の無催告解除、違約金等を定めた内容です。
反社会的勢力の排除条項を定めておくことには、どのような意味があるのでしょうか?
1.暴力団排除条例について
多くの暴力団排除条例では、契約を締結する際に、暴力団排除条項を定めることを努力義務としています。
具体的には、事業者は、事業に係る契約を締結する場合には、契約の相手方などが暴力団関係者でないことを確認したり、
後に暴力団関係者であることが発覚した場合には契約を解除できるように契約で定めたりするように努めなければなりません。
特に不動産を譲渡する場合などは、事業者であるか否かを問わず、その不動産を暴力団事務所に使用するものでないことを確認したり、契約書上で、その不動産を暴力団事務所に使ってはならないこと、
及び、暴力団事務所として使用した場合には、売買契約を解除したり、その不動産を買い戻せることを規定したりするように努めなければなりません。
このような暴力団排除条例の要請に応えるという意味で、暴力団排除条項を定めておくべきなのです。
2.反社会的勢力との関係遮断について
暴力団排除条例が、全国で制定されたことから、反社会的勢力との関係遮断は、重要な社会の要請といえます。
事業者であれば、反社会的勢力との関係を疑われた企業は、取引上の信用を害することになりますので、暴力団排除条項を定めておくことが極めて重要です。
また、事業者であるか否かにかかわらず、反社会的勢力と意図せず契約を締結してしまった場合には、暴力団排除条項を根拠に、反社会的勢力との契約を解除し、関係の遮断を図ることができるという利点があります。
これらのことからも、不動産の売買契約書には、暴力団排除条項を定めておくべきなのです。
万一、不動産の売買契約の相手方が暴力団排除条項を定めることに難色を示した場合には、相手方が反社会的勢力である可能性もありますので、
その相手方と不動産売買契約を締結するかどうかも含めて、慎重な検討が必要になるでしょう。
反社会的勢力排除条項導入の効果
不動産取引に反社会的勢力が関与することは、事業者や業界にとってのリスクであることはもちろん、不動産が反社会的勢力の活動拠点となった場合には、その近隣住民の身体、生命にとっての脅威となる等、消費者にとっても大きなリスクがあります。
この条項が広く普及することで、暴力団事務所が設置される前の不動産取引の段階で、これを食い止めることができるようになります。
また、万が一暴力団事務所が設置されたとしても、周辺住民による訴訟等によらず、契約解除という手段で原状回復をすることが可能となり、事務所撤去の機動性も高まりますので、消費者にとってのリスクを小さくすることができます。
このような措置は、暴力団事務所設置の阻止のみならず、暴力団への資金源を遮断するとともに、健全な経済社会の発展に資するものといえます。
なお、実際の不動産取引において、相手方に反社会的勢力の疑いがあり、契約を拒否または解除したい場合等には、最寄りの警察署、または各都道府県警察に相談することが可能です。
事業者の方だけでなく、一般の売主様、買主様にも、暴力団等反社会的勢力排除条項を正しく理解していただくことが、社会全体で暴力団等反社会的勢力を排除していく大きな原動力になると確信いたします。
以下は、土地建物公簿取引用(売主一般消費者)の売買契約書の各条項の一覧です。
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土地建物公簿取引用(売主一般消費者用)の各条項
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