不動産売買契約書の解説 第17条「契約違反による解除」
第17条「契約違反による解除」
売主又は買主は、相手方がこの契約に定める債務を履行しないとき、自己の債務の履行を提供し、かつ、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。
2.前項の契約解除がなされた場合、売主又は買主は、相手方に標記の違約金(F)を請求することができる。ただし、債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして相手方の責めに帰することができない事由によるものであるときは、違約金の請求はできないものとする。
3.前項の違約金に関しては、現に生じた損害額の多寡を問わず、相手方に増減を請求することはできないものとする。
4.違約金の支払いは、次のとおり、遅滞なくこれを行う。
① 売主の債務不履行により買主が解除したときは、売主は、受領済の金員に違約金を付加した額を無利息で買主に支払う。
② 買主の債務不履行により売主が解除したときは、売主は、受領済の金員から違約金を控除した残額を無利息で買主に返還する。この場合において、違約金の額が支払済の金員を上回るときは、買主は、売主にその差額を支払うものとする。
5.買主が本物件の所有権移転登記を受け、又は本物件の引渡しを受けているときは、前項の支払いを受けるのと引換えに、その登記の抹消登記手続き、又は本物件の返還をしなければならない。
6.本条の規定は、第20条に定める契約不適合による契約の解除には適用されないものとする。
この条項は、契約違反があったとき、売買契約が解除できること、解除された場合には、当事者の合意によって定められた「違約金」を請求できることを定めた内容です。
契約違反による解除の3つ要件
契約違反による解除の3つの要件は以下の通りです。
1.契約違反の事実があること
2.契約違反が違法であること「同時履行の関係」
3.催告したこと「配達証明付き内容証明郵便」
では、詳しく説明します。
ここからは重要ですので、できれば最後までお読みください。
1.契約違反の事実があること
この条項では、解除の事由として
「この契約に定める債務を履行しないとき」と定めています。
そのため
「全ての義務違反が解除の事由になるのでは」と考えられがちですが、各条項の義務内容は千差万別で、解除事由になるかどうかの見方からすると軽重があります。
例えば、残代金決済日に
買主が、売買代金の支払いをしてくれない、
売主が、引渡しに応じてくれない、
売主が、抵当権等の抹消をしてくれない、
売主が、所有権移転登記に応じてくれない、
売主が、引渡し前の滅失毀損で修復してくれない、
などの場合は、
契約内容の重要性から見て、原則、契約解除の事由になると考えられます。
その他の条項では、
特に実損がでればともかくとして、
解除事由に成りえない場合もあることに注意しなければなりません。
「違約解除」と「合意解除」不動産会社の責任者にも認識間違いが多い不動産売買契約の「違約解除」
2.契約違反が違法であること「同時履行の関係」
売主、または、買主が契約違反をしても、それが違法でなければ解除権は発生しません。
例えば、売主の不動産の引渡しと買主の代金支払いは、同時履行の関係にあります。
また、売主の所有権移転登記申請と買主の代金支払も、同時履行の関係にあります。
これが第1項に文言にある
「売主又は買主は、相手方がこの契約に定める債務を履行しないとき、自己の債務の履行を提供し」の「自己の債務の履行を提供」が「同時履行」にあたるのです。
例えば、
買主が代金の支払いを怠るという契約違反の事実があったとしても、売主が不動産の引渡しや所有権移転登記手続きを怠っていたら、
買主の契約違反は、違法にはならないのです。
分かりやすい例で説明すると、
残代金支払日(所有権移転の日)が到来する前に、買主が「この契約をキャンセルしたい」との申し出たとしても、
この段階では、まだ契約違反にはならないのです。
なぜなら、
契約キャンセルの申し出をしたとしても、決済日までは、買主は残代金を支払わなくても契約違反にはならないからです。
これを「期限の利益」と言います。
言い換えると、
買主は、今、契約のキャンセルを申し出たとしても、もしかしたら、決済日には残代金を支払うこともあり得る、という考え方です。
また、決済日がまだ近づいていないのであれば、売主も物件の引渡しや所有権移転登記に応じる準備ができておらず、
同時履行の関係は成立していません。
つまり、
契約違反になっていないものに、
契約の履行を催告することはできない、ということです。
逆の場合も同様です。
売主が今「この契約をキャンセルしたい」と申出ても、買主が残代金を支払う準備ができていないのであれば、同時履行は成立していないので違法ではありません。
また、決済日に売主が物件を引渡すこともあり得る、との考え方により、決売主にも「期限の利益」があり、その日までは物件を引渡さなくても違法でないのです。
3.催告したこと「配達証明付き内容証明郵便」
催告とは、契約違反をした相手方に対して、相当な期間を定めて契約の履行を促すことを言います。
相手方が契約に定める債務の履行を怠ったとき、その債務の履行を催告し、それでも履行してくれないときにはじめて、契約を解除して違約金の支払い請求ができるのです。
通常催告は「配達証明付き内容証明郵便」で行います。
例えば
本書面到着後7日以内に代金お支払いください。お支払いただけないときは、右期間経過をもって、違約金の請求とともに本契約を解除します。
という内容で通告することになるでしょう。
違約金の請求・・・ここはかなり重要です
違約金として、
売主と買主の合意で定めて
売買契約書の表記に記載した違約金を請求することになります。
この違約金の額を、
一律、売買代金の20%相当額と定めている契約書がありますが、
違約金の額が高額に成りすぎると、
違約金の支払いができずに、
契約の解除自体ができないケースがありますが、
全宅の契約書では、
売主と買主の合意により違約金の額を定めることができるようにしています。
民法では、契約違反を理由とする解除では、
契約違反と相当因果関係にある損害を請求できることになっていますが、
どの部分が相当因果関係にある損害なのかを明確にすることは、かなり困難です。
そこで、第3項では、
あらかじめ、損害額として契約時に売主と買主が合意した金額に決めて、実損害が、その額を上回っても下回っても、その差額は互いに請求できないことにしています。
違約金の額は、債務の履行を怠った当事者に相応のペナルティとして課せられるよう、ある種、抑止力を持たせる必要があります。
違約金の額があまりにも少ないと、その抑止力が働かず、簡単に契約解除ができる可能性が高くなり、売主も買主も、契約上も法律的にも不安定な状態になります。
そのような状態をできるだけ避けるために、違約金の額は、手付金額、または売買代金の10%から20%くらいを目安として設定することが望ましいと思います。
なお、この契約書では、
違約金を請求するにあたって、実損害の発生等の証明をすることは必要としていません。
原状回復とは・・・原状回復義務
契約解除により、この契約の効力は失効します。
そこで、契約解除前に
買主への所有権移転等の登記がなされているのであれば、その抹消登記を行い、
不動産の引渡しが既に完了しているのであれば、その明け渡しを、
売主が受領している金銭(申込金、手付金、中間金等)があれば、その返済を、
それぞれ速やかに行わなければなりません。
民法では、これを「原状回復義務」と呼んでいます。
なお、売主、買主に、原状回復義務があるときは、
違約金の授受と同時履行の関係にあることを覚えておいてください。
つまり、違約金の授受と原状回復は同時に行う必要があるということです。
以下は、土地建物公簿取引用(売主一般消費者)の売買契約書の各条項の一覧です。
「Click or Tap」していただくと、そのページをご覧いただけます。
土地建物公簿取引用(売主一般消費者用)の各条項
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