不動産売買契約書の解説 第12条「印紙代の負担」
第12条「印紙代の負担」
売主及び買主は、各自が保有するこの契約書にその負担において法令所定の印紙を貼付する。
この条項は、不動産売買契約書に貼付する当事者(売主様・買主様)の印紙代の負担について定めた内容で、印紙税法や民法に対する特約的な内容になります。
契約書を保有する人が印紙代を負担します
売買契約において、
一般的には契約書が2通作成され、
売主、買主がそれぞれ1通ずつ
保有することになっています。
そして、こちらの条項では、
その契約書に貼付する印紙代は、
保有する者が負担することになっています。
ただし、印紙税法や民法では
例え契約書が1通であっても印紙代は
売主と買主が連帯して負担することが原則になっているのです。
つまり、この条項は印紙税法や民法に対する特約的内容になっているのです。
印紙税法上の取扱いは?
印紙税法では、課税文書を作成する際は、
原則文書を作成したほうが印紙代を負担すべきと定めています。
ただし、
課税文書を共同で作成した場合は、
当事者が連帯して印紙代を負担する義務があると記載されています。
ここで問題となるのは、何をもって「共同作成」となるかということです。
印紙税法では、
文書が「作成」されるのは、文書の目的を行使する時点であると規定しています。
たとえば、不動産売買契約書を締結する場合、当事者(売主・買主)の意思が合致していることを示すのが文書作成の目的ですので、双方が署名捺印した時点で「文書が作成された」ということになります。
この場合、
当事者全員が共同で文書を作成することになるので連帯して印紙代を負担する必要があるのです。
連帯とは、
複数の人が共同で同じ責任を負うことですので、例えば、自分が保有する契約書だから印紙を貼付しないとしても、その相手方が、あなたの印紙代を負担しなければならないのです。
民法上の取扱いは?
民法によって定められた印紙代の負担割合は、
第558条 (売買契約に関する費用)に
売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
と規定されています。
つまり、
契約書を締結する際に必要となる費用は、
当事者全員が等しい割合で負担する必要がある、ということです。
このように、
印紙税法と民法では印紙代の負担割合に対する考え方が少し違いますが、売買契約書の場合は、当事者が折半して印紙代を負担することが原則になります。
ただし、
契約書を1通しか作成しない場合はどうなるのでしょうか。
たとえば、契約書を1通のみ作成し、一方が原本、一方がコピーを保管する場合です。
契約書を1通のみ作成する場合の負担割合
契約書を作成するときに、原本を1通のみ作成し、一方が原本を補完し、一方がコピーを保管することで印紙代を節約するケースが増えています。
たしかに、作成した契約書を単にコピーしただけのもので、コピーした契約書に署名捺印がされていなければ課税対象になりませんので収入印紙は不要です。
ただし、特約として次の文言が必要になります。
◆売主と買主は、この契約を証するため契約書1通を作成し、売主及び買主が署(記)名捺(押)印のうえ、その原本を買主が保有し、写しを売主が保有する。
◆売主と買主とは不動産の売買契約を表記条件にて締結した。その証として、この不動産売買契約書を一通作成し、売主及び買主が署(記)名捺(押)印のうえ、原本を買主、原本の写しを売主が保有する
逆に、コピー(写し)の契約書であっても印紙代の納付が必要なケースがありますので注意してください。
印紙税がかかる課税文書は、「契約の成立を証明するために作成され、当事者の一方または双方の署名捺印がある文書」ですので
コピーであっても、それが契約の成立を証明する目的で印刷されたものであれば課税文書となるのです。
具体的に、以下の条件に当てはまる契約書は課税文書に該当します。
◆本文に「原本と相違ない」と言った意味の文言が記載されている
◆本文に「契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙各自が1通を保管する」という文言が記載されている
◆割印が押されている
◆コピーに契約当事者双方または一方の署名捺印がされている
このように、
コピーした契約書が課税文書に該当するかどうかの判断は難しいので、十分に注意してください。
売買代金に消費税が含まれる場合の取扱いは?
消費税課税事業者が売主になる場合で、
契約書に、
建物本体価格と消費税等相当額が
明記されている場合には、貼付する印紙は、
売買代金から消費税等相当額を除いた、
土地建物本体価額に対する印紙額になります。
以下は、土地建物公簿取引用(売主一般消費者)の売買契約書の各条項の一覧です。
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土地建物公簿取引用(売主一般消費者用)の各条項
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